日々短編

あつべよしき

冒険草子

春はボルケーノ火山。だんだん赤くなっていく山に言い知れぬやばみを感じていると山を割って巨大なドラゴンが現れた。共に冒険をしていた旅の仲間達もこれはいかんと我先に逃げ出す。ただ一人ドラゴンの観察を試みようとした研究熱心な女魔法使いの首根っこをひっつかんで逃げ走るのは大変だった。


夏は夜。月が中天にあがると闇はさらに深くなり、闇の奥からおどろおどろしい魔物たちが次々と現れた。神官が放つ光魔法は絶大な効果を発揮し魔物たちを一掃した。光魔法の残光と灰になる魔物たちを見ながら、これ俺たちいらねんじゃねーか?と旅の仲間達でともに存在意義を問うたのもいい思い出である。


秋は夕暮れ。旅の疲れを癒すために立ち寄る街や村を囲む田畑がもっとも美しい時期である。命からがら乗り切った冒険の後に飲むビールほど美味しいものはない。宿屋の固いベッドの上で次の冒険をどうするか仲間たちと相談するのは毎度心躍ったものだ。


冬はメテオツー隕石Ⅱ、魔王が放つ最大攻撃魔法である。死ぬかと思った。賢者の防御障壁がなければ即死だった。魔王との戦いは激戦を極めたがなんとか勝利する。この先の人生でこのときほど喜び、悲しむことはもう二度とないだろう。


冒険の思い出はすべて忘れがたいものばかりだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る