サキュバス魔王

サキュバスが魔王になった。


この報告が王国に届いたとき、長らく続く魔物の国と人間の王国との戦いは人間の勝利に終わると人間側は確信したが、実際はそれは新たなる悪夢の幕開けに過ぎなかった。


禁欲的な前魔王に反し新しいサキュバス魔王はとにかくセックスを奨励した。種族関係なしに子作りに励み、人間は殺さず犯すこととした。果てには人間に犯されて子供を孕めということすらあった。


これにより人間の今まで出会ったことのない新種の魔物が多くあらわれるようになり、人間の積み重ねてきた魔物に対する知恵はあっという間に古くなってしまった。


王国の精兵、宮廷魔術師は次々と新種の魔物に討たれるか捕らわれることとなり、王国の戦力は激減した。


さてこうなると勇者の登場を待つしかない。


ある日夢のお告げに従い屈強な若者が現れた。王は王国側の戦意高揚と時間稼ぎを兼ねた打算的な考えから、これは間違いなく勇者であるとして魔王の討伐に向かわせた。


仲間を引き連れ勇者は意気揚々と旅を始めた。

初め仲間たちはいくらか不安を感じたが、不思議にも勇者の指示に従うと窮地を脱する機会が何度もあり、次第に勇者を信頼していくこととなった。


何故そんなにも的確な判断が下せるのかと思った仲間はある日勇者に問うた。勇者によると、夜な夜な夢の中に女神が現れ勇者にお告げをするというのだ。そのお告げに従えば魔物などに負けることはない、と。また、その女神はとても美しくこの世のものではないとも自慢していた。


さてその後もお告げの助けを借りながら、勇者一行は魔物をなぎ倒し、海を越え山を越え迷宮を抜けついに魔王城にたどり着いた。


魔王の城には異様に魔物が少なかったのですぐに魔王の元にたどり着いた。


魔王と対峙する勇者は愕然とする。

魔王は夢のお告げを与えた女神にそっくりな姿をしていたからだ。

勇者はこれを問いただすと、魔王はこう答えた


「サキュバスは夢を介して世界中の男を惑わす。それは汝とてかわりはない」


と。するとどこに潜んでいたのやら大量の強力な魔物が現れあっという間に勇者を取り囲む。絶体絶命の窮地に立たされる勇者。仲間が次々と魔物に捕らえられられた。


魔王は勇者に提案をした。


「私にお前の子供を孕ませろ、そうでなければ皆殺しだ。」


ほどなくして勇者は枯れて死に、魔王は勇者との子を宿した。


その後王国がどうなったのかは語る人はいない。

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