第42話――魔王さんと勇者様ご一行、最終決戦! 2
『それでは、全校集会を始めます。生徒会長挨拶』
その瞬間、館内の照明が一斉に消えた。
どよめく生徒たちの前に、黒マントに黒い覆面の少年と、同じく黒マントに黒覆面の少女が現れた。まるで舞台俳優のように、ピンスポットを浴びて。
『ごきげんよう! 仁正学園の生徒諸君! 僕は生徒会長であり、コンタク党仁正学園支部長であり、そしてコンタクトの魔王となった道明寺由隆だ!』
「コンタクトの魔王?」
「なんだ、また生徒会長の冗談か?」
「デンパ系だったんだなぁ、生徒会長」
一部の教師も慌てふためいているが、それらの教師に共通しているのは、みな眼鏡をかけていることだった。
『僕は昨夜、コンタクトの魔王としての力に目覚めた! その力は、余りに強大だ。僕は出来ることなら、ことを穏便に進めたい。そこでだ!』
由隆はマントを翻らせながら、両手を広げた。その瞳のコンタクトレンズに、スポットライトの光が反射して、キラキラと輝いている。
『今この場で、眼鏡をかけている諸君には、それを外してもらいたい。拒否は即ち死を意味する!』
眼鏡をかけている生徒たちから、怨嗟の声が上がる。やがてそれは眼鏡をかけていない生徒にもおよび、体育館中が大騒ぎになってしまった。
『ハイグレードコンタクトレンズビームっ!』
突然、由隆がそう叫ぶと、体育館の後方の壁が大音響と共に崩れ落ちた。騒ぎは一瞬収まり、次いで別の意味での大騒ぎが始まった。
「ビームってなんだよ!」
「あれで撃ち殺すっていうこと?」
『言ったはずだ。拒否は死を意味する、と。これは冗談ではない!』
あれほど騒がしかったメインアリーナは、今や葬儀場のようにシンとしていた。
時折、壁の破片が崩れ落ちる音が館内に響く。逃げ出そうとする生徒は、いなかった。
『よろしい。それでは、これから眼鏡を回収して廻る。先生方、お願いします』
眼鏡をかけていない教師たちが何人か立ち上がり、ステージの前に整列した。一人の女生徒が、震える手で眼鏡を外そうとしていた。
「はやくしたまえ!」
教師の強圧的な態度に、女生徒の手の震えは大きくなる。
「そんな横暴な指示に、従う必要はない!」
静まりかえった館内に、晋太郎の声が大きく響く。入学式でのあの時のように、晋太郎は立ち上がって叫んでいた。あのときと違うのは、晋太郎の言葉に続いて三人の少女の声が上がったことだ。
「そうよ! そんな横暴な要求を呑むことはありませんっ!」
「ボクたちがいる限り、そんなことは許さない!」
「父の形見の眼鏡を奪うというのなら、わたしは戦います!」
四人の『眼鏡に選ばれし者』が立ち上がっていた。声の限りに、コンタクトの魔王に抵抗していた。その姿を見た女生徒は、震える手で眼鏡を押さえると、はっきりした口調で言い切った。
「私っ、眼鏡は外しません!」
館内が歓声で包まれる。割れんばかりの大歓声だ。だが、それは轟音でかき消された。
『ハイグレードコンタクトレンズビームっ! 愚か者どもめ。せっかくチャンスをやったというのに。もう構わん、力尽くで眼鏡を奪い取れ! 戦闘員ども、かかれーい!』
「「「「「コンタ――――ックっ!!」」」」」
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