ツリフネソウ
岸泉明
第1話
サキはクラスでもマドンナと呼ばる存在だった。瞳はパッチリと見開いて、髪は闇夜のように真っ黒で、流れる川のように滑らかだった。
清楚な雰囲気とどこかクールなイメージが、僕の中で彼女を美しいガラス玉のような存在にしていたのだった。
僕は彼サキと仲良くなりたくて、毎日彼女に話しかけた。彼女はいい女だった。いつも僕の話すことをニコニコしながら聞いてくれる。
そんなある日の放課後、サキは僕に一本の花をくれた。
「あなたにこれあげる」
「なんの花?」
「フリツネソウ」
そう言ってサキは教室を出た。
小さいピンク色の花だった。綺麗な花だ。まるで夕暮れの空のように燃えるようなピンクの花に対し、朝露のようにどこか儚い手触り。
「フリツネソウかぁ」
僕は、何かの本でこの花の花言葉を見かけたことがあった。
確か……
「私に触れないで」
ツリフネソウ 岸泉明 @Kisisenmei
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