第20話 第二の大広間〜真相と流れ星〜
ヌルは初めて死亡を体験した。
肉体の消滅と共に目の前が暗転する。
やがて視界が晴れ、周囲の景色が変わったのを確認する。
見渡すと、ダンジョン最初の小部屋であり、三種類の扉の前にいた。
パーティが全滅した事でダンジョンの入り口に戻されたのだ。
こちらを見ている仲間の顔がある。
ヌルは頭を下げる。
「本当に申し訳ないです…!」
(どうしてこんな事に…)
それがヌルの素直な感想であった。
ーーーーー
しばらく前。
ティオの乗り物酔いからの回復を待ち、一行は進行を再開した。
大部屋を探索した事で、ハチコは攻略のヒントらしき巻物を手にしていた。
壁の模様の掛け軸に混ざって、本物の掛け軸が配置されていたのだという。
内容はゲーム内の古語で、よくわからない。
次の部屋へ向かう通路を抜けつつ戦略について相談する。
「ティオさんはどうしましょうか…?」
「ええと、センパイ…。ボクちょっと今は役に立たないカモです。」
普段と違い、しおらしくそう答える。
乗り物酔いから覚めて以来こんな感じだ。
戦闘分野は得意ではないため、どう工夫すれば役に立てるのか思いつかないのだ。
「ククク…。せいぜいを俺の活躍を目に刻んでおくといい。」
「うう…。」
そんな会話をしながら第二の大広間へとたどり着いた。
砂地の床。
壁には地平線と青空が映し出されている。
砂漠を演出したような空間だった。
やはり第二のボスモンスターも大広間の中央に鎮座している。
『Lv.135 写術帝の式神:赤』
上半身がヒト、下半身がヘビのモンスターであり『ナーガ』と呼ばれる種類の魔物である。
通常のものであれば上半身はプレイヤーと同程度の大きさだが、このボスは上半身だけでヌルの全長(触手除く)と同じくらいだ。
今度は名前に相応しく、ヘビの部分が赤い。
先行偵察を行っていたあまねくから、近隣種が砂に潜るタイプのモンスターであることや、壁は絵なので第一のボスのいた大広間と同じ程度の広さである事などを共有されている。
「あっ!」
とはハチコの声で、お姫様抱っこをしようとしたヌルに待ったをかける。
「この場所、『
どうやらこの大広間は屋内と屋外両方の性質を持つようで、使用できる能力が限られていることがわかった。
仕方なくハチコとティオは大広間の隅で邪魔にならず、敵の攻撃範囲に入らないように注意しつつ戦う事にする。
主に役目はサポートだが距離があると難しい。
戦闘が始まれば大広間は密閉されるので、通路で待つという選択肢はない。
伝承に基づいたハチコの推論では、ボスモンスターは魔法に対して強い耐性がある事、何か特殊な技を使用する事が考えられる。
そして、尻尾の先にある水晶を取り除けば、それらの特性を無効化できるのでがないか? というものだった。
確証は無いが他にヒントもないため、ハチコの推論を基準として作戦を立てる。
まず、ヌルとあまねくで左右からの挟み撃ち。
あまねくが先制してボスの気を引く。
そして背後からヌルが掴みかかる。
砂に潜れないように拘束したら、あまねくが尻尾を切り落とす。
というプランを相談し、実行に移す。
「極意の太刀ィ!」
その攻撃で戦闘が開始したが、ボスモンスターはイソギンチャクのように尻尾から砂に潜ってしまう。
それでも完全に潜り切る前に、ヌルが触手を相手の首に巻き付けるが、顎が外れたように口を開くと『黒い煙』を大量に吐き出したのだった。
「毒ガスっ!?」
ハチコがそう叫ぶ。
ボスを中心に撒き散らされた煙は、ハチコやティオには届かなかったが、ヌルとあまねくの姿を完全に隠してしまう。
「センパイっ!」
ティオが解毒薬を持って飛翔する。
「あっ、ちょっと待ちなさい! 毒とは限らないのよっ!?」
ハチコの静止も聞かずに飛んでいってしまう。
煙の中では、あまねくが即座に自身の異常に気づいた。
「チッ! 間に合えっ!」
装備を「名刀:
これは自身を含めた味方を斬ると、HPの1割と引き換えに状態異常を治療し、5秒間だけその効果に掛からなくする効果がある。
迷わず自分の脇腹を斬り、効果が発生したのを確認してから、ヌルを探して煙の中を進む。
「ヌル殿! どこだ!」
既にボスの姿はなく、ヌルの触手も解かれていた。
「う…。」
うめき声を聞き、あまねくがその場所に急行する。
「ヌル殿、今助け…。しまっ…!」
あまねくの頭をヌルが掴む。
そして造作もなく握りつぶし、あまねくは消滅した。
煙が晴れたハチコとティオの目に映ったのはその様子だった。
「えっ! 何? 何で?」
狼狽するハチコだったが、ヌルの名前がおかしい事に気づく。
名前というより種族。
『Lv.255 ヌル・ぬる ゾンビ合成獣/魔王』
「…ぞんび?」
キョトンとした顔でそう呟いた。
ボスに使用された特殊攻撃は毒ガスではなかった。
ゾンビ化ガス。浴びた者をゾンビにしてしまうのだ。
ハチコはその特徴を自分の宝の地図に表示させる。
(状態異常:ゾンビ…治療可能な「ゾンビ化」を5秒経た後に発生する。肉体の操作が一切不能になり、味方に無差別攻撃を始める。パーティメンバーがゾンビだけになると一定時間後に死亡する。)
状態異常のゾンビはかなり高レベルの特殊なモンスターしか使用しない。
ゆえにハチコもティオも対策や対応方法を知らなかった。
ゾンビ状態になってしまったら治療は不可能であるため、倒してから蘇生を行うしかない。
そんなことは知らず、ヌルを毒状態と勘違いしたティオは飛び込んだのだった。
ーーーーーーー
謝罪を込めて頭を下げるヌルの胸中には暗雲が立ち込めていた。
ハチコのおかげで前回の失敗ほど思い悩んではいない。
しかし、自分の責任でパーティは全滅した。
もっとしっかりしていれば…という考えが重くのしかかる。
そんなヌルの雰囲気を察したハチコとティオは慰めの言葉をかけようとする。
だが、何と声をかけたものか。
「えと、その…。」
「あうぅ…。」
その雰囲気を破壊したのは、あまねくだった。
「ククク…。はっはっはっは! 流石はヌル殿だ、俺をまたも一撃で倒すとは。オイ、ヌル殿が敵に回ったら俺らは何もできんぞ! はっはっは。」
一方であまねくは知っていたのだ。
ゲームにおいて取り返しのつく失敗をした者は笑い飛ばしてやればいい。
野次を飛ばしたっていい。
要は前を向かせさえすれば良いのだ。
それをハチコは驚いた顔で見るが、その意図を理解する。
一方でティオは、あまねくが単純にヌルを
「ふふ…そうですね。私は最初の四天王として加入してからヌルさんの戦いを見てましたが、まさか自分が攻撃されるとは思ってもみませんでした、ふふふ。
あんな攻撃は防御のしようがありませんね。」
「ボ、ボクはゾンビになってもセンパイと一緒にいますからねっ! だからダイジョブですよ!?」
「ふふふ、ティオさん、それじゃダメですよ。」
雰囲気がぐっと明るくなり、敗戦などなかったかのようだった。
ヌルはそれ感じ取り、救われたと感じていた。
(ああ、このメンバーで。彼らが四天王で本当によかった…。)
ヌルに顔が実装されていたら、きっと涙を流していたことだろう。
あまねくの想定ではヌルの判断に間違いはない。
初めての敵での敗北は情報収集こそ肝要で、敗北の原因がわかってるならば追及の必要はない。
「それで、どうする?」
あまねくがハチコに尋ねる。
彼女が参謀であることを認め、この状況の手綱を預けたのだ。
「あまねくさん。もしよろしければゾンビ状態について詳しく教えてもらえませんか?」
その答えに、あまねくはニッと笑って頷く。
ハチコの返答は彼の望んだ100点満点の内容だった。
自然に今後の話を展開できるのだから。
あまねくはゾンビについて話し始める。
「…というわけだ。ゾンビ化の5秒間のうちに手を打つ必要があるが、喜べ小娘。
妖精の専用スキルにこれの対策となるものがある。」
「おっ!」
キラキラとティオの顔が輝く。
「妖精の加護だ。…使えるよな?」
「も、もちろんデス! 星が出るのでライブ中もよく使ってます!」
効果はちゃんと読んでないデス…と小声で言う。
「チッ…それは効果を使った対象への状態異常を15秒無効にする予防スキルだ。
それを使ってヌル殿のゾンビ化を無効化しろ。
当たり前だが、既にゾンビ化が始まったら効果がないから間違えるなよ?」
「わ、わかってますよぅ! センパイはボクが守りマス!」
あまねくはヌルに振り向く。
「ヌル殿。」
「は、はい!」
「あの敵はおそらくゾンビ化以外の手段も使うと考えていいだろう。何か状態異常を防ぐ手段は持っているか?」
例えば、あまねくであればイヤリングを付けている。毒や混乱、麻痺といった代表的な状態異常を無効化できる優れものだ。
ヌルは種族的にイヤリングは装備できないが、その分パーツという装備枠がある。
「はい。パーツを付け替えれば、毒と病気、流血。…あと麻痺は防げそうです。」
「装備が揃わない中でそれだけあれば上出来だ。」
ヌルは嬉しくなる。
パーツを検分していた経験が報われたのだ。
さっそくパーツを付け替えるが、それらは設定通り見た目に反映されていく。
「…センパイ…ちょっとだけ…少しだけ、気味悪いデス…。」
遠慮がちにティオはそう言うが、それこそが合成獣のあるべき姿である。
とはいえ、触手はミミズのような赤い節状になり粘液で覆われている。全身に緑の斑点が出たし、白いフサフサした毛のようなものが血管の代わりに出ている。
ティオの表現はだいぶ控えめと言える。
ハチコは何も言わなかった。初対面で絶叫した経験を恥じているので、以降、ヌルの見た目には言及していない。
「ハチコ殿は敵が砂中に潜ったら、次の出現位置をマップから確認して伝達してくれ。冒険家のマップなら俺らよりも早い。」
「ハイ! ではマップを16分割して、番号を割り振りますね。後で番号を共有します。」
「……! 十分だ。」
的確な判断を即座に下したハチコに驚く。
あまねくも、このパーティを気に入っていた。
それぞれが役割を再認識し、頷き合う。
「再チャレンジよ!」
なぜかハチコが宣言したのだった。
再び挑んだ『Lv.135 写術帝の式神:赤』。
結果としては彼らは突破できなかった。
作戦に落ち度はなく、想定していた範囲では予想通りに進んだのだが…。
ティオの加護によってゾンビ化を予防したヌル、ボスを拘束し、逃げられないようにした。
ヌルは拘束に合わせて「圧縮合成」を行い、敵のHP大幅に減退させる。
倒すならあと4〜5発は撃ち込む必要があるが、次に使用可能になるまで100秒ほどかかる。
敵の動きがヌルによって制限されているうちに、あまねくが尻尾を切り落とそうとするも、想定外の事態が発生する。
尻尾の先にある水晶が怪しく光ったと思うと、光を浴びたあまねくの右手が石化してしまったのだ。
「チッ!」
それでも左手で尻尾を切りつけるが、相手は自分よりレベルが高く、ましてやボスモンスター。ダメージは与えられたが切断には遠かった。
ヌルは尻尾に触手を叩きつけてダメージを蓄積させようと動くも、触手に光を浴びてしまい、5本ほどが使用不可能になる。
極め付けはボスが新たに吐いた緑色の煙だった。
モロに浴びてしまったヌルとあまねくには「能力値低下」のデバフがついてしまう。
普段は5000程度のダメージを与える攻撃が150程度しか発生せず、パワーが大きく低下していることがわかった。
ヌルも能力値が下がっているために、強引に拘束を抜けられてしまう。
ボスモンスターの
集めるだけ情報を集め、敗北したのだった。
第一ボスの大広間まで戻ってきた一行。
「フム…。ゾンビに石化。対生命体特化の状態異常か…。」
あまねくは誰かを責めたりする事なく、思考する。
パーティが与えられた役目を忠実にこなした上での敗北なのだ。
今以上の工夫よりも、欠けている要素を追加する方が自然である。
「生物系じゃない魔物を大量に連れるか…。違うな、俺らよりも弱くては意味がない。
ならば
「どうしましょうか? どちらにも心当たりはありませんが、適合する能力の魔物を探せばいいのでしょうか?」
「いや、治療役は魔物では判断が遅くて使い物にならん。状態異常にかかる前から動き出せるのはプレイヤーだけだ。」
あまねくはそう言うが、最上位の魔物であれば可能である。
だが、彼らの内にその事を知るものは居ない。
「じゃあ、ここで終わり…でしょうか。何だか戦闘面であまり役に立ってなくて申し訳ないです。」
「いいや、アンタはその弱さにしては見上げた働きだ。」
「ええと、ありがとうございます?」
そんな会話がなされる。
ティオはハチコよりも高レベルであるのに、ほとんど何もできていないのでショックに打ちひしがれていた。
(もう少し戦闘面も練習しないとセンパイに見放されちゃう…!)
などと考えていた。
一方、ヌルはヌルで全く別のことを考えていた。
一見、責任を感じて黙っているように見える。
実際には頭の中でとある実験について考えていた。
一応の考えをまとめると、向き直る。
「あの、俺一人で挑戦してみてもいいでしょうか?」
そう口にしたのだった。
「…? ヌル殿?」
意図が読めず、首を傾げる。
ハチコは優しい顔をする。
「ヌルさん、さっきの敗北の責任を感じなくていいんですよ? 私たちは十分楽しかったです。」
ヌルが一人で責任を取ろうとしている。と彼女は思った。
しかしヌルは頭を横に振る。
「あ、いえ。違うんです。」
言いにくそうに明かす。
「実は、その…最終奥義を試そうと思ったんです。ですが、奥の手なので、誰にも見せたくないな…と。」
「ヌルさん…!」
意外にもハチコにあったのは驚きと嬉しさだった。
初心者で、全部の情報を公開していた彼が、自分にも内密に行動できるようになった。
成長している。
もちろんと返答しようとしたハチコの言葉を、突然元気になった妖精が遮る。
「ええ〜! 魔王の秘密って言ったら、第二形態じゃないデスか!
センパイの第二形態みたいみたい! 見たいデス〜!!」
「黙れ小娘! こんな時に出しゃばるな! ヌル殿への応援歌でも歌っていろ!」
「何ですと! いいですよーだ。作詞作曲ティオちゃん。ボクの魔王サマ。ボクの〜魔王サマは〜とても〜強くて〜♪」
ティオはヌルの真意を理解せず、彼を元気づけようと空回りしている。
そのためおかしなテンションになっているのだ。
アドリブで歌い出したティオ放置して、あまねくはヌルに向き直る。
「俺らはアンタを信用している。
だから、俺らに隠し事があったとしても気に病まなくていい。もっと我儘に振る舞って構わない。
それに、ヌル殿が一人で戦うからって、俺らを足手まといだと思っていないことくらい、分かるとも。」
ヌルは頷く。
「そして、いつか俺と戦う時に、その奥義を使ってくれ。今後の楽しみにさせてもらう。」
あまねくが良い顔でそう告げたのだった。
ヌルは仲間に礼を言うと、背を向ける。
そして再戦のために通路に向かって進み始める。
通路を行くヌル。
後ろに誰の気配もないのを確認してから装備メニュー開く。
誰にも見せていない指輪を装備する。
装備無しだった胴体部分に「GMブースター」を装着する。
「力をお借りします。アンブレラさん…!」
ーーーーーーーーーー
とあるビルの一室。
ダンジョン攻略をするヌルたち一行を眺めるのは辺見とあと二人。
二人は同期であり、それぞれバランスを設定するチームと、マップを制作するチームのエースでもある。
鞠来は「リッキー」の愛称で親しまれている。
『写術帝の隠れ井戸』とその周囲の森の作成は彼女が担当している。
そしてコンセプトに合ったボスの作成を、親友でもある鏑木に依頼したのだった。
このダンジョンは二人の共同制作であり、後輩たちに「かくあるべき」というお手本として紹介していた。
なので、このダンジョンをヌルに簡単にクリアされてしまうと面目が丸潰れなのだ。
「ゾンビだけじゃなくて石化も設定しといて良かった〜!」
「マジありがと〜! これで諦めて帰ってくれるでしょ。」
互いに讃えあう。
「うんうん。このパーティに無生物化のスキル持ってる人は居ないし、想定した攻略要素よりずっと足りないから大丈夫!」
その様子を納得いかなそうに見るのは辺見である。
「いーや、きっと彼らなら越えてくれるハズです!」
「だーかーらー、越えられたらマズいんだって!」
「アナタがヌル・ぬるさんに肩入れするのはわかるけど、あまねくさんの言う通り、ヒーラーが足りないから無・理・よ。」
2対1の構図で辺見が劣勢だが、ここで画面内に動きがある。
「ん? ヌルさんが何かするのかしら?」
「…え? ちょっと待って、アレって『インスタントGMシステム』…!? 何でぇ!?」
勝手に辺見のデスクに手を出してヌルの装備を確認する。
「カブちゃん、アレって何…? とても嫌な予感がするんだけど…。」
鏑木の目が泳ぐ。
「一定時間GMになれる指輪…。そのー…GMには…もしかしたら、状態異常の完全無効がー…あったカモ…?」
「何だってそんなアイテムが?」
そんな時、ヌルの声が響く。
『力をお借りします。アンブレラさん…!』
「お前の仕業か、笠原ぁ〜〜!!」
笠原のいるブースへと駆け出す2人。
ちなみに笠原もまたこの二人とは同期である。
一時期は職場結婚の噂も出るくらいに仲が良いのだが、真相は互いに遠慮がないだけである。
遠くのデスクから「お前ふざけんなよコノヤロー!」という声を聞いた。
そして、辺見は満足そうに笑うのだった。
「やっちゃえ! ヌルさん!」
ーーーーーーーーー
「スイッチオン!」
という掛け声で戦いの幕が上がった。
ヌルはブースターを加速させる。
まるでミサイルのように加速してボスに掴みかかると、そのまま上昇する。
ボスが砂に潜ろうとするがそれを許さず、砂から完全に引き抜く。
潜るパワーより、GMブースターの推進力が圧倒的に優っているのだ。
ボスを掴んだまま飛翔を開始した。
空中で黒い煙を吐き出して抵抗するが、機械の身体へと変化しているヌルには通用しない。
上昇しながら「圧縮合成」を使用すると50万近いダメージが発生し、ボスのHPが3割ほど無くなる。
「やっぱり。」
GMへの変身がヌルの攻撃力を底上げしていることを理解する。
さらに上昇を続ける中で25本の触手全てをボスに向ける。
幾らかはボスに絡みついているが、それでも先端をボスの体に向ける。
そしてレーザーを照射した。
光線自体は1発1000ダメージ前後と、ヌルの攻撃力に比べれば低いようにも思えるが、25本もある上に連射が効く。
魔王城の岩ほどではないにしろ、ガリガリと相手のHPを削る。
敵のHPの残りは50%よりも若干多いと言うところ。
ボスも尻尾の水晶から光を発してヌルを石化させようとするが、機械の身体はそれを許容しない。
やがて「ゴッ」と音がする。
ヌルが天井にぶつかったのだ。
大広間の最高高度だろう。
ヌルはドーム状の空間を想像していたが、どうやら円柱形であった。
しかし、それは嬉しい誤算だった。
高さはあればあるほど良い。
ヌルは180度向きを変える。
「行くぞッ!」
ボスを下敷きにしたまま固定すると、急降下した。
ブースターで加速に加速を重ね、地表へと直進する。
早すぎる落下速度に、炎のエフェクトが発生し、やがて地面に激突した。
大爆発と地響き、撒き散らされた砂が壁にあたって高温で溶ける。平坦だった砂地がすり鉢状に形を変えたことがその衝撃をあらわす。
砂煙に紛れて7桁の数値が見えたような気がしたが、ボスのHPが0になったこと以外はヌルは気にしなかった。
「やったぜ。」
ウィィンと銀色に光る機械の手でガッツポーズを取る。
この戦いを唯一見ていた辺見によって、この攻撃は『流れ星』と名付けられることになり、結局2名分の悲鳴が上がるのだった。
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