月夜の魔法

いざよい ふたばりー

第1話 月の夜ばなし


夜。

それは人の心にちょっとした魔法がかかる時間。

朝日と共に魔法が解け、我に返ると自分を呪いたくなるような、そんな魔法が……

特に多感な少女ともなると、それが如実に表れてしまいます。

そこの小さく可愛らしい家の、小さく可愛らしい少女もまた同じ。

窓辺に位置する机の上に、ねむる前まで書き綴っていたのでしょう、その部屋に住む少女による手紙が広げてあります。月の光と共に窓からのぞいてみましょう。


…………


拝啓

お元気ですか私は元気です。


いきなり手紙なんてびっくりしたかな、ごめんね。

でも、どうしても言いたいことがあるの。

それは、私のキモチ。


自分のキモチに気づいてどれだけ経ったかな。

最初はほんの些細なきっかけでした。


初めは面白いなって思っただけだったけど、そのうちあなたの事を考える時間が日に日に増えて行き、気づいたら目で追っかけて、あなたを見つけられたら嬉しくて、そばにいたくて……


気がついたら私の心はあなたに支配されていました。

それからは少しずつ、あなたの好きな所に気がつく様になりました。

笑った時の声、人を気遣える優しさ、本当はそんなに強くないのに、強がる所。

時折見せる、無邪気な意地の悪い所。

悪態、文句、悪口を言う時の喋り方。

あなたの声、良いところも悪い所も含めた性格、全部があなたを魅力的に見せる要因でした。


今日は声が聞けるかな?病気になっていないかな、なんていつも思っています。


でも、あるきっかけで気づいちゃった。

あなたは1番に話したい人がいて。

なんでも相談したい人が、1番喜んで欲しい人がいて。

あなたはその人と仲良くしていて。

たぶん……付き合っていて。

最初にその事を知った時、とてもショックで、でもあなたには迷惑をかけない様にしようとして。

だけどあなたは優しくて……

私は悲しくて、この世から消えようかなって何回も計画を立てたんだよ。

いっそのこと、あなたを嫌いになろうかな、なんてバカな事も考えたりもした。

でも、気がつきました。

ああ、やっぱり私はあなたを好きなんだなって。


だから。


私はあなたが誰を好きであっても、

誰と結ばれていても、あなたを思い続けていいのかな。

それくらいは許して欲しいな、なんて。

あなたが元気で笑っていてくれたらそれで満足。

あなたが幸せでいてくれたらそれで……


本当は……あなたの恋人になる事が1番嬉しいけれど。


でも、高望みはしないね。

迷惑はかけない様にするから。

ずっと、ずうっとあなたを好きでいさせてください。


大好きです。



……………


とても気持ちのこもった、素直な手紙ですね。

しかし、この想いを綴った手紙は誰のもとへ届く事もなく、

翌朝破り捨てられてしまいましたとさ。

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月夜の魔法 いざよい ふたばりー @izayoi_futabariy

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