《第四章》Escape

心音が聞こえる。いつ見つかってしまうか分からない緊張感。トワはまだ2階にいる。研究員たちが1階で走り回っている音と、会話が聞こえてくる。「あんなのが外に出たら、俺たちどうなっちまうんだ…」「早くあの怪物を食い止めないと!」見つからないように音を立てずに少しずつ進む。(えっとこのまままっすぐ行ったら……突き当たりを左に曲がって……右に……あ、あった、階段!)2階に研究員はいなかった。そのまま階段をゆっくりと下りる。なにやら1階が騒がしい。ちょうど折り返し地点でトワはその下を恐る恐る覗いて見た。するとそこには、予想外の景色が待っていた。驚くべき研究員の量。何人いるだろうか。群がっていて、奥の出口が見えないほどだ。(ちょっと……ここからどう行けっていうのさ……)覗くのをやめてため息をつく。ここにずっといてもしょうがない。何かしなければ。トワは彼の言葉を思い出した。「途中で困ったことがあれば、周りを見渡すんだ。そして状況を把握しろ。」1度深呼吸をして、もう一度ロビーの様子を伺う。何処か気になる所はないだろうか。たくさんの人、天井に並ぶ電灯、そして透視することでやっと見える出口。(……わかったぞ。)ただ、久々に能力を使うので自分の思った通りの力が出せるか不安だった。(大丈夫だ、あのぐらいの人数なら簡単に吹き飛ばせるはず!)トワはついに階段を降りた。何人かの研究員がこちらに気づいた。「お、おい!いたぞ!」その瞬間、トワは両腕を突き出し、その手の先に力を込め、能力を発揮した。とても力強く、白くて細いその手から、予想を遥かに上回るほどの圧力がかかり、研究員たちは吹き飛ばされ、次々に壁にぶつかっていく。苦しそうな声をあげながらも、やはりすぐに立ち上がる研究員が所々にいた。すぐにこちらに来そうな勢いだったので、トワはすぐに次の手段に移る。今度は両腕を上にあげ、強烈な電流を放った。すると天井の電灯は壊れていき、部屋がどんどん真っ暗になっていく。そう、トワは停電を起こしたのだ。真っ暗になって何も見えない研究員たちが叫んでいる。「おい、何も見えないぞ!」「懐中電灯はどこだ!」「このままじゃ逃げられるぞ!」そんな言葉が飛び交っている間に、トワは必死に走っていた。さっきの衝撃で少し開いていた出口に向かって。

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