第6話 戦闘後

その武者の怪物が倒れるのを見た伊織は、長剣を地面に刺して倒せたと息を荒くしている。武者の怪物が地面に倒れて霧のように掻き消えると、地面に女の子が倒れるのを伊織は見た。


「だ、大丈夫か! 生きてるか!?」


伊織が女の子を抱きかかえて何度も声をかけていると、一台のハイエースが伊織の側に停車した。


「な、なんだ!?」


伊織が驚いていると、車から一人の若い女性が出てきた。その若い女性は黒髪の短髪で、二重ながらに鋭い目つきなど感じる。黒いパンツスーツを着ており、スタイルの良さが強調されている。


「怪物を倒していただきありがとうございます。 そちらに倒れている結乃さんを渡してください」


渡してくださいと若い女性に言われた伊織は、この女の子は傷ついているんですよと言った。すると若い女性は知っていますと言う。


「国の専門機関にて治療をしますので、この車に乗せてください」


そう淡々と伊織に言う若い女性は、治療のために早くしてくださいと言う。伊織はその言葉に渋々従うと、その若い女性が一枚の名刺を伊織に渡してくる。その名刺には国家防衛機構、岬若葉と書かれていた。


「国家防衛機構?」


伊織がそう呟くと、若葉が国直轄の特殊組織ですと言う。若葉が伊織に組織名を言うと、伊織が抱えている女の子が呻き声を上げ始めた。


「た、大変だ! 死んじゃう!」


伊織が慌て始めると、若葉が大丈夫ですと冷静に伊織に言う。


「実験体の少女なので、薬によって自己治癒力を高めてあるので、既に傷が塞がりつつありすよ」


そう言いながら若葉が女の子の傷口付近の服を捲る。伊織は目を背けると、若葉が淡々とした口調で見てくださいと言った。


「え……傷口が塞がってる!?」


伊織が何度も驚いていると、駅の改札口から愛奈が伊織を呼ぶ声が聞こえてきた。


「お兄ちゃん! 心配したよ!」


愛奈は綺麗な髪を振り乱し流しながら伊織に抱きついた。伊織は女の子を地面に落としそうになるもの、辛うじて落とさなかった。


「心配かけてごめん……頭の中の声に従ったら剣が出てきてこの女の子と協力して倒せたよ」


伊織が説明をすると、愛奈は見てたよと涙を流しながら伊織に言う。愛奈と伊織が話していると、若葉が後日少しお話しをさせてくださいと伊織に話しかける。


「いいですけど、何の話をするんですか?」


不思議そうな顔をして伊織が言うて、若葉はあなたの力のことですと真っ直ぐ伊織の目を見て言った。伊織は力のことかと呟くと、女の子を車の後部座席に寝かした。


「この力のことで話せる事は何もありませんよ。 俺自身もわからないんですから……」


伊織がそう言うと、若葉は組織内に専門家がおりますので大丈夫ですと言った。


「そうですか……ちなみに後日とはいつですか?」


伊織のその言葉に若葉は手帳を取り出し、今週の土曜日にお迎えにあがりますと若葉は言う。


「わかりました……」


伊織がそう同意をすると、若葉はそれではと言って車に乗り込んで女の子と共にどこかに行ってしまった。


「あの女の人防衛省の人とかなのかな? なんか怖かったね……」


愛奈が怖かっていると、愛奈の姿を見た同級生と思われる女子生徒が愛奈に話しかけてきた。


「愛奈ちゃん! 大丈夫!?」


二人の愛奈と同じ制服を着ている女子生徒が、小走りで学校方面から来た。愛奈は二人を見ると真夏と春海と名前を呼んだ。


「愛奈のお兄さんが戦ってるのを見て心配したよ! 愛奈ちゃんは無事だった!?」


そう真夏が言うと、愛奈はお兄ちゃんが逃してくれたから無事よと笑顔で返す。

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