神と魔王とその狭間

そら

序章 きっかけ

第1話 神となる少年

「いい天気だなぁ。」


 晴れ渡る空の下、爽やかなそよ風を感じる森の中。

 ブロンドの髪をもつ赤い瞳の少年キラは、新緑が眩しい木の上から呟いた。


「キラ様、いつまでここにいるのですか。授業を抜け出すなんて、何を考えていらっしゃるのですか。」


 キラより歳は2、3歳上だろうか。

 白髪で水色の瞳の青年サイルは、キラのいる木を登りながら叫んでいる。


「なんでついてきてるんだよ。先に学園に戻っててよ。僕がどこで何をしようと僕の勝手だろ。」

「先に戻れる訳ないじゃないですか。私は代々神に仕えている執事の一族なんです。次代の神となるキラ様に仕える者として、当然のことです。」


 息を切らしながら、ようやくキラのいる高さまで登り、キラが座っている枝の近くに座ったが、木から手を離そうとしない。

 額には汗が浮かんでいる。


「あれ?もしかして、サイルってまだ高所恐怖症なの?」


 キラは悪戯っぽい笑みを浮かべながら、サイルを見つめている。


「そ……そんなことないですよ!怖くなんか……ってやめて!やめてください!……おい、キラ、やめろっっっ!!」


 突然キラが、サイルの座る枝を大きく揺さぶり、サイルの顔がひきつった。


「それだよ、それ。その喋り方!昔から高い所が苦手なのは変わらないのに、喋り方は変わっちゃったからさ。もっと昔みたいに気楽に喋ろうよ。」


 サイルを見つめるキラの赤い瞳が、太陽の光に照らされ、吸い込まれてしまいそうなほど美しく輝いていた。


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