第5話

 なんなんだ。


 わたしが勝つために必死に走って跳んで、それでようやく勝てたというのに。離空くんは、あんなにゆっくり休んで。


 心のざわざわが、止まらない。


 卒業したら、彼はどこか、市外へ進学してしまうのに。


「くそっ」


 どうすればいい。


 このまま、毎日この部活で対戦して。それで、終わりなのか。


 好きな人との生活は。


 わたしの恋は。


 次の対戦が、はじまっていた。


 後輩カップルが、へらへらと撃ち合っている。男の後輩のほうは、さっきのPDWに長尺のスコープを付けている。


「ありえない」


 屋内近距離用のPDWに、長距離狙撃用のスコープなんて。


「なんなのよ」


 いらいらする。


 どうすればいいのか、分からない。


 目の前の幸せそうな二人にすら、耐えられない。


「どうすれば」


 なぜか込み上げてくる涙を、歯をくいしばって耐えた。

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