第19話 黄金部屋
今日は、家族みんなで一泊の旅行に来ていた。
朝早くから、車で目的地まで向かい、温泉街で色々と見て回る。
ぶらぶらと歩いていると、うどんの美味しそうなお店があったので、そこで昼食をとることにした。
冷たいうどんや温かいうどんなど、様々なパターンから選べて、さらに色んな種類の天ぷらから自分の食べたいものを選ぶこともできた。
私は、温かいうどんに、海老とサツマイモと卵の天ぷらをトッピングした。
ボリュームたっぷりで食べ応えがあり、とても美味しかった。
お腹がいっぱいになり、満足したところで、再び温泉街をぶらぶらとする。
すると、美味しそうなソフトクリームのお店があったので、満腹ではあったが、食後のデザートに食べることにした。
私が選んだのは、シンプルなバニラのソフトクリーム。
ほどよい甘さが何ともいえず、美味しかった。
さらに、お腹がいっぱいになり、また温泉街を歩き出す。
その後も、色々と見て回ったのだが、朝早くから家を出たこともあり、少々疲れてきた。
そのため、早めにチェックインをして、部屋で休もうと思い、旅館へ向かい車を走らせた。
旅館に着くと、私たち家族はチェックインを済ませ、その後、仲居さんに部屋まで案内された。
「こちらでございます。」
案内されて、入った部屋の中は、驚くほど全てが金色に輝いていた。
壁も床も見渡す限りの金色で、金色でないものを探すほうが難しいくらいだった。
こんな部屋を頼んでいたかな。
真剣に考えたが、全く覚えがない。
それでも、家族は喜んでいるし、なんだか豪華な雰囲気で珍しかったので、このままこの部屋に泊ることにした。
部屋の案内が終わって、仲居さんが部屋を出ていく。
朝早くから動き回ったので、とても疲れていた私たちは、しばし黄金一色の部屋でくつろぐことにした。
黄金の床に寝転がって、上を見ると、天井まで金色だった。
徹底した金色だな。
そう思って、室内をもう一度見渡してみる。
カーテンもテーブルも椅子も、テーブルに置いてあるものも全部金色だ。
あまりに金色すぎて、目からの刺激が強すぎるのか、なかなかゆっくりとした気分にはなれなかった。
起き上がり、テーブルの上にあったお茶菓子を食べようと思って、手を伸ばすと、それまでも金色に輝いていた。
金色の個包装から中身を取り出すと、金箔入りの和菓子が中に入っていた。
味は、ほっとする味だったので、少し安心した。
ここまできたら、どこまでが金色なのか、色々と確認したくなってきた。
そして、私は、室内をウロウロとして、あらゆるものをチェックし始めた。
冷蔵庫も金色、クローゼットも金色、トイレも金色、浴室も金色。
全て、外側だけでなく、内側まで黄金だった。
特に、浴室は立派なもので、中は広々としており、浴槽がとても黄金で眩しかった。
旅館なので、一階には露天風呂付きの大きな温泉があると案内されていたのだが、ここまで立派な黄金風呂があると、こちらに入ってみたくなった。
そこで、浴槽にお湯をはることにした。
まさか、お湯まで黄金かと思ったが、そこは普通のお湯で安心した。
浴槽が大きいため、完全にお湯をはるまでに、まだ時間がかかりそうだ。
なので、それまでの間、一階の売店で時間をつぶすことにした。
家族を誘おうかと思ったが、疲れていたのか、みんな昼寝をしていたので、一人で行くことにした。
売店は広く、色んなものが売られていた。
宿泊している部屋が黄金だったため、この旅館が黄金にこだわっているのかと思っていたが、売店では黄金に関係するものが売っているわけではなさそうだった。
部屋にあった黄金のお茶菓子も、お菓子コーナーで探してみたが、売っていなかった。
私たちの部屋だけが特別なのだろうか。
気にはなったが、誰かに聞けるわけでもなく、売店をウロウロする。
部屋で寝ている家族のために、和菓子の箱を一つ購入すると、自分の部屋に戻ることにした。
帰ってくると、部屋はやっぱり黄金に輝いていて、眩しかった。
お風呂の浴槽を覗いてみると、いい感じにお湯がはっている。
私はお湯を止めて、家族が寝ている間に、一人ゆっくりとお風呂に入ることにした。
広すぎる黄金のお風呂に、私一人だけ。
とても優雅な気分に浸れた。
もちろん、シャンプーやリンスの容器も黄金だった。
こんな体験は二度とできないだろうなと思いながら、湯舟につかる。
しばらく、黄金な時間を堪能して、お風呂から出ると家族が起きていた。
みんなも黄金風呂に入りたいといったので、順番に入っていく。
やはり、黄金過ぎるお風呂が気に入ったのか、みんな満足そうな顔をして、お風呂から上がってくる。
みんながお風呂に入り終わったころ、ちょうど夕食の時間になり、私たちは個室の食事処まで食べに行った。
料理は、黄金ではなく、普通のものだった。
だが、普通とはいっても、品数が多く、豪華な料理ばかりで、とても美味しかった。
食べ終わって部屋に戻ると、布団が敷いてあったのだが、布団もやっぱり黄金だった。
寝る準備をして、家族みんなで黄金の布団に入り、眠ることにした。
今日一日、朝から色んなところを回ってきたが、結局この黄金部屋のインパクトが強すぎて、旅行の思い出が黄金一色になりそうだな。
そう思いながら、眠りについた。
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