第9話 ママ友
気が付くと、どこかの部屋にいた。
そこに、よくテレビのニュースやワイドショーで目にするコメンテーターの男性が目の前にいて、必死に私に話しかけていた。
ここは、テレビ局の中なのだろうか?
関係者がそこら辺をウロウロして、とても忙しそうにしている。
私は、必死にコメンテーターの男性に話しかけられているのだが、あまりにも話し方が必死で、それに応じることができずその場を離れたかった。
すると、部屋の入口付近で、私の名前を呼ばれる。
振り返ると、そこには普段学校でお世話になっているママ友がいた。
なぜここにママ友がいるのだろう?
ここはテレビ局ではなかったのか。
そう思いながらも、私はこの場所を離れたかったので、コメンテーターに挨拶をした後、部屋を出てママ友に着いていくことにした。
「早くしないと、売り切れちゃうわよ。」
そう言われて、着いた先は部屋を出てすぐのところにある、ロビーのようなところだった。
よく見てみると、ロビーの壁際で、おいしそうなタルトが沢山売っていた。
タルトは、棚に並べられていて、自分で食べたいものをトレーに入れることができた。
リンゴのタルトや、フルーツが山盛りのったタルト、チーズタルトや、チョコタルトに抹茶タルトもある。
どれもすごく美味しそうで、どれにしようか真剣に迷っていると、周りがタルトをどんどん自分のトレーにのせていく。
このままではタルトが本当に売り切れてしまう。
そう思って、私もトレーにタルトをのせ始める。
気持ち的には全部食べたかったが、そんなに買っても食べきれないため、リンゴタルトとチーズタルトとチョコタルトを買うことにした。
そして、待ってくれていたママ友と、真ん中に何台か置いてあったテーブルでタルトを食べた。
ママ友と会話しながらのタルトはとても美味しかった。
三つ食べたが、まだ食べられそうな気がした。
それでも食べすぎると、カロリーが気になるので、ここで止めておく。
タルトを売っていた店はもう完売しており、片付けの準備に入っていた。
タルトを食べ終わって、ママ友とロビーの先の廊下を歩き出す。
すると、そこにはまた違うママ友がいた。
何をしているのかと思って聞いてみると、「ここで自分の好きなミニクリアホルダーが自由に選べて、しかも無料で貰えるのよ。」といって必死に選んでいた。
「え、無料!?」
無料という言葉に弱い私たち。
その言葉を聞いてお得だと思った私と、一緒にいたママ友も、必死で並べられたミニクリアホルダーを選び出す。
すると、そこへまた違うママ友がやってきて、ドロップの缶を持ちながら、なめないかとすすめてくれた。
持っているドロップの缶をのぞき込むと、ブドウ味のドロップが沢山入っていた。
そのママ友にお礼をいって、ママ友みんなでブドウ味のドロップをなめる。
すると、次はまた違うママ友が必死になにかその場で作業していた。
何をしているのか覗いてみると、何やらアンケート用紙のようなものに真剣に書き込んでいる。
そのアンケート用紙は書いたほうがいいのか、そのママ友に聞いてみる。
ママ友は、「どっちでもいいと思うけど書いたほうがいいかもしれない。」と言うので、他のママ友たちとドロップをなめながら真剣にアンケート用紙を書き出した。
すると、そのアンケート用紙、最初は質問が二つくらいしかなかったのに、書いていくほど、下に質問が増えていく。
おかしい。これじゃあ、いつまでたってもアンケート用紙が書き終わらない。
そう思って、焦り始める。
周りのママ友を見ると、みんなもう書き終わろうとしている。
なんで私だけ、質問が終わらないのだろうか。
疑問に思いながらも、まじめにアンケートに答えていく。
答えるたびに、質問内容もだんだんと難しくなっていき、答える時間もどんどん長くなっていく。
悪戦苦闘していると、ママ友がどんどんアンケート用紙を書き終わり、一人また一人と去って行く。
気が付くと、周りには一人もいなくなってしまい、私一人が頑張ってアンケート用紙に答えていた。
誰もいなくなってまで、頑張って答える必要があるのだろうか。
そもそも、このアンケート用紙に必死に答えて、何か得するのだろうか。
そう考えて、いつまでたっても終わらないアンケート用紙に答えることを諦めた。
すると、それ以上はアンケート用紙の質問数は増えなかった。
私は、最後の質問の回答が中途半端になってしまったアンケート用紙を折りたたんで、回収ボックスに入れた。
そして、ママ友たちが去っていった方向に自分も歩く。
その後、いくら歩いてもママ友たちには出会えなかった。
きっと、私のアンケートに答える時間が長すぎて、先の方まで行ってしまったのかもしれないし、すでに解散してしまったのかもしれない。
ここがどこなのか分からなかったが、偶然会って楽しそうに食べたり、話したり、なにか一緒に作業したり、気が付けばいなくなっていたり、そういうことが気軽にできるのがママ友なのかもしれないなと思うのであった。
また、ふと偶然どこかで会っては、楽しい思い出が作れそうな気がした。
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