デート

俺達は電車に乗り、少し前にアクセサリーを買いに行った事のある、ショッピングモールに向かっていた。


電車に乗るも、少しの沈黙が続き耐えられなくなって声を掛けた。


「今日は映画でも見に行こうか!何か見たい映画とかあるか?」


横に座っていた彼女は、途端に身体をビクッとさせ



「えっ、あっ。うん!映画何見に行こっか!」


彼女から返答が来たかと思えば、何か考え事でもしてたのか質問に対して答えになっていなかった。


「何か考え事か?」


首を横に振る彼女に、これ以上深く聞くことはしなかった。


ショッピングモールに着き、特に行きたい店がある訳では無い為、適当に店を回ることにした。


「此処って、アクセサリー買った店だよね」俺達にとっては、まだ記憶の浅いデートの場所である。


「そうだな。今日は映画の後、何処か行きたい所あるか?俺は柚葉が楽しみめることなら何処でも着いていこうと思う」



「和鷹くん。君はいつも私に決めさせるけど、君は行きたい所はないの?うちは君の事もっと知りたいよ」


俺は、これでも頑張っていた方だと思っていた。初めての"彼女"という事もあるけど、彼女の言う通り俺は、彼女の事を何も知ろうとしなかったし、聞いてこなかった。


「柚葉は、写真部に入ったのって何か理由はとかあったの?」


柚葉はニコリと笑い


「それは、君が居たからだよ。君と少しでも一緒に居たいって思ったからだよ?」


俺は、てっきり無理していたんだとばかり思っていたから、彼女のその話は初耳だったし驚いた。


「それじゃ、うちからも一つ聞いてもええ?」


彼女の言葉にゴクリと唾液を飲み込む。


「うちの告白、なんで受けてくれたん?」


いつか聞かれると思っていたから、驚くことも無かった。


「俺は...」


「いいよ。理由が何にせよ今のこうして君と付き合えてるわけだし、私は今を楽しみたいって思うよ。和鷹くんも、同じ気持ちやったら嬉しいな」


「うん」


「なんやゴメンな。せっかくのデート暗くなって。映画、そろそろやんな!行こ!もうこの話はこれで終了な」


「そうだね..」


それから恋愛ものの映画を一本鑑賞し、軽く喫茶店に入り、映画の感想なんかを言い合った。


「ご注文はお決まりでしょうか?」

俺と柚葉はメニューを指差し、


「うちは、ケーキセットでモンブランとアイスティーで」


俺は優柔不断な性格で店員が来て、決めていたメニューを辞め、急遽柚葉と同じメニューを選んだ。


「それじゃ、俺も同じので」


「かしこまりました」


「ねぇねぇ、さっきの映画余韻凄いねぇ~和鷹くんはどうだった?」


俺は、映画の余韻どころか見る前の彼女との会話に頭がいっぱいで、それどころではなかった。


「そう...だね。うん!感動したね」


流石に苦しかっただろうか、そっと彼女の顔を覗いてみた。


「うちは、夏より冬の方が好きやけど、こんなに暑いと海とかプールとか行きたくなるよね」


彼女は両腕を伸ばし、うんと背伸びをするも、少し無防備に思う半袖の服は目のやり場に困った。


「そっそうだな。此処じゃ近くに海は無いけど、いつか"海"行けたら良いな」


俺は交通手段をいくつか頭に浮かばせた。誰に連れていってもらうか、二人で行くのは危険だし必然的に親に送って貰う形になるだろう。


その方が安全だと判断した。

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