魔法使いの彼女は、俺を許してくれない。
祭 仁
第1話prologue
三十歳となった年の瀬。
俺は、母校である東國ヶ丘高校の同窓会に参加した家路についている。
その足取りはアルコールを呷ったせいか、ふらふらとしておぼつかない。
暫しの休憩をする為に、冷たい電柱へ身を預けた。
ふと、夜空を見上げると、ひらひらと振る雪が街頭から灯りを貰い、その冷たさを感じさせない温もりを持っているようにみせた。
俺は、酔いを覚ますように大きな吐息を吐いた。
それは、すぐに白く濁り口元から離れ、霧散していく。
こんなに酔ったのは、何時ぶりか分からない。
それもこれも、数時間前の同窓会のせいだとははっきりしない意識の中でも、それだけは理解出来た。
久々に見る友人達は、懐かしい雰囲気と時間の経過が刻んだ顔がそこにはあった。
そんな彼らと談笑しつつ、横目に彼女達をチラチラと探す。
しかし、最後までその姿を見つけることは出来なかった。
俺が『過去を過去のものにする為』に彼女達への懺悔をいつかしなければいけないと思っている。それは『過去を清算する為』といってもいいだろう。
第三者から見れば、「くだらない」と一蹴りされるようなことだろう。
こと自分と彼女達に関していえど、お互いにたった一言交わせば水に流れるような単なる昔話にすぎないだろう。
問題はそのタイミングが今の今までなかったから、ここまで拗らせていると言ってもいいだろう。
そして、今回もそのタイミングは失われた。
俺は、いつになったら彼女達の呪縛から解放されるのだろうか。
そんな思考を終わらせるかのように、俺はもう一度深く息を吐き、再び歩きだした。
やっと着いた、ボロアパートの部屋は外とは違いある程度の暖かさを保っていた。
コートを椅子の背もたれにかけて、シワにならないようにスーツをハンガーにかける。
毛玉が少し目立ち始めた少し厚手の部屋着に着替えるとベッドに身を完全に預けた。
天井の染みや木目を見つめていると、瞼が重力に負けて、ゆっくりと閉じられる。
その日、俺は泥のように眠った。
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