S級ダンジョンへ挑む冒険者だったが他の世界に転移してしまった

すたりな

第1話 プロローグ①

 ――ここは、とあるダンジョン都市にはずれに位置するS級ダンジョンと呼ばれる場所。


 本来20年前にはダンジョンとして存在しなかった場所である。


 数年前にスタンピードが起こった事により発見された。


 冒険者ギルドはこれを成長型ダンジョンと呼び、最下層は謎とされていた。


 一説によれば、このダンジョンにはダンジョンコアの他に、ダンジョンマスターと呼ばれる存在が実在するという。


 ダンジョンマスターは、ダンジョンを創造クリエイトすることが出来る存在というのが都市伝説の推察の領域を越えないものではあったが、信憑性があった。



 数年前に探索していたあるパーティの一団が、ダンジョンマスターを見たという報告があったのだ。


 その真相を確かめようと、数多くの冒険者がこのダンジョンに挑んでいる。



 確固たる証拠として、数日前になかった宝箱が設置されている、ボス部屋が出現する、モンスターが出現しない場所がある等、数多くの報告が相次いだ為である。


 こうして、冒険者は日々このダンジョンを攻略するために奮闘するのであった。



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 ――とある部屋


(よし、もうすぐ完成だ! 長き苦労が報われる時が来たのだ!)


 ここに一人の男がいた。



 彼の名前は、松本 光範まつもと みのる



 かつて日本より転移した、転移者だった。



 彼の父親はある宗教法人の教祖であった。


 彼が転移前までは、この宗教法人はありとあらゆるメディアに注目を浴び、彼の父親は参議院選挙にも出馬するほどの勢いがあった。


 様々な事業などに参入。飲食業、出版部門、化粧品などに多岐にわたる。


 そして、松本 光範まつもと みのるは後継者として期待されていた。



 ――しかし、彼の父親は平和な日本にも関わらず多くの妻を娶っていた。


 自分の子供に後継者にしたいのが親心である。有力候補であればあるほど、反対勢力の反発は激しいものになる。



 そして反対勢力の策略により、父親から暗殺指示が出た。わずか10歳にして崖から突き落とされ、殺されたのであった。

 ――いや、殺されなかった。


 そのままこの世界に転移してきたのだった。


 その後、松本 光範まつもと みのるは存在しなかった物として扱われ、長男は別の人物にあてがわれた。



(日本に戻って復讐してやる! そのための力は身に付けた。俺様が教祖として降臨してやる!)



 ――その栄華を極めた宗教法人も今は存在しないことを彼が知る由もなかった。




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 ――ここにある冒険者がいた。


 名前はライ。最初はごく一般的な冒険者とされていたが、斥候としての腕前を評価されパーティに誘われた。


 後に上位パーティと呼ばれるが、これはまた別の話。



 ライは冒険者を生業とするものだった。ある日ライとその仲間たちは、S級ダンジョンにパーティーメンバーと共に挑んでいた。


彼らは気が付いていなかった。


最下層まであと一歩とのところまで迫っていたのだ。




 ――こうして、このダンジョンのボスであるフロアマスターがいる部屋に迫りつつあったのだった。

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