特盛りでお願いします!

高山小石

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「ちょ、センパイ、これ見てくださいよ」


 新人賞の粗筋を読んでいた後輩が、俺を呼んだ。


「なになに? 『婚約破棄された悪役令嬢が辺境のダンジョン経営でスローライフをしようとしていたら、スタイリッシュなおっさん賢者が異世界から召喚した重課金でしか出ないレアなもふもふ妖怪と一緒に暮らすことになり、タイムスリップした怪盗を助けたところ失われた伝説のグルメレシピを授かって……』って。おいおい。いくらなんでも詰め込み過ぎだろ!」


「そうですかぁ? 案外面白そうじゃありません?」


「いやいや。ないない」


「えぇ~。私は好きですけど~」


「まぁ『婚約破棄された悪役令嬢』も『辺境のダンジョン経営でスローライフ』も『スタイリッシュなおっさん賢者』もわからんでもない。ただこの『レアなもふもふ妖怪』ってなんだよ? 一反木綿にしても、ぬりかべにしても、もふもふはしてないだろ」


「え~? ○○にゃんとか○○ズラ~じゃないんですか?」


「それは言っちゃダメなヤツだ」


「九尾の狐とかカマイタチとか猫又とかですかね?」


「ううーん。重課金してそれなのか? 進化したり上位種がいたりするのか? まぁもふもふ妖怪はそれでいいとして、『失われた伝説のグルメレシピ』もまぁいいよ。なんで『タイムスリップした怪盗』なんだ? ただの怪盗でいいだろ」


「それはアレですよ。タイムスリップと言えば切なさ要素じゃないですか~。きっと涙を誘う展開が待ち受けているんですよ!」


「いやいやいやいや。じゃあ、わざわざ『怪盗』でなくてもいいだろ。ただの料理人でよくないか?」


「もー、私たちが議論してたって仕方ないですよ。読めばわかります!」


「そうだな。読んでみるか」


 ――――読了後。


「せんぱぁい、私ぃ、めっちゃ感動しましたぁ」


「意外に読めたな。ま、強いて言うなら、もうちょっとこう、お色気要素が欲しかったかな」


「まだるんですか!?」


-終-

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