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いや、そういえば……。
頭の中の像が、まるではじかれたように、幾重にも重なって現れてきた。
何だろう、この記憶は。
たしかその前も、別の一行に、同じ道案内をした覚えがある。
そうだ、あのときも、あの一行が魔将を倒してこの村に還ってきたはずだ。
それだけじゃない。
その前も、さらにその前も、何度も何度も、同じように道を尋ねられて、そのたびごとに同じように答えていたのを思い出した。
次から次へと、似たような連中が、似たような身なりで現れては、同じ道をたどる。
もちろん少しずつの違いはある。
剣が小振りだったり、槍や弓矢だったり、一行も、筋骨隆々の男ばかりで固めていることもあれば、うら若い女性や女子ばかりのこともある。
無数に連なる勇者一行の姿。それに、魔将は何人いるんだろう? 倒したやつが翌日からまた蘇っているんだろうか?
目まいがするほど頭がくらくらしながらも、ようやく階段の真下までたどり着き、昇ろうとした。
が、この間とはうって変わって、彼らの威光が増している。どうあっても近寄りがたい。ここまで押し寄せてきた群衆も、階段の下で足踏みしている。
それでも、ここで止まっては仕方がない。押し合いへし合いしている村人の間をくぐり、何とかして一歩を踏み出した。
勇者一行がこちらに気づいて、何人かが身構える。
一気に階段を昇り切って、勇者の向かい側に立ち、声を絞り出した。
「僕を覚えてる?」
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