5頁

 いや、そういえば……。

 頭の中の像が、まるではじかれたように、幾重にも重なって現れてきた。

 何だろう、この記憶は。

 たしかその前も、別の一行に、同じ道案内をした覚えがある。

 そうだ、あのときも、あの一行が魔将を倒してこの村に還ってきたはずだ。

 それだけじゃない。

 その前も、さらにその前も、何度も何度も、同じように道を尋ねられて、そのたびごとに同じように答えていたのを思い出した。

 次から次へと、似たような連中が、似たような身なりで現れては、同じ道をたどる。

 もちろん少しずつの違いはある。

 剣が小振りだったり、槍や弓矢だったり、一行も、筋骨隆々の男ばかりで固めていることもあれば、うら若い女性や女子ばかりのこともある。

 無数に連なる勇者一行の姿。それに、魔将は何人いるんだろう? 倒したやつが翌日からまた蘇っているんだろうか?


 目まいがするほど頭がくらくらしながらも、ようやく階段の真下までたどり着き、昇ろうとした。


 が、この間とはうって変わって、彼らの威光が増している。どうあっても近寄りがたい。ここまで押し寄せてきた群衆も、階段の下で足踏みしている。

 それでも、ここで止まっては仕方がない。押し合いへし合いしている村人の間をくぐり、何とかして一歩を踏み出した。

 勇者一行がこちらに気づいて、何人かが身構える。

 一気に階段を昇り切って、勇者の向かい側に立ち、声を絞り出した。

「僕を覚えてる?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る