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 野原が途切れるあたりに、小川が流れている。石造りの橋を越えて、だいだい色の瓦屋根が連なる家並みの中へと入り込む。

 曲がりくねった通りを抜けると、すぐに教会の前の広場にたどり着いた。

 広場には、すでに大群衆がごった返している。

 教会の前の階段の上に、馬に乗り鎧に身を包んだ連中が見える。

 あれが勇者一行らしい。

 あちこちで大勢の歓声が上がり、手にしていた鍬や鋤を突き上げる様子が、周囲の村人の肩越しに見える。


 わあわあと騒いでいる老人に話してみる。

「ずいぶんと喜んでいますね」

 ちらりとこちらを振り向くが、はしゃぐのをやめない。

 だめだ。こいつには話ができない。

 今度は、隣り合わせになった若者に話しかける。

「大層な賑わいだな」

 今度はこちらに向き直り、にこりと笑った。

「そうだな、何しろあの魔将を倒してくれたんだ」

 どうやら話が通じるらしい。重ねてたずねた。

「魔将か、どんな奴だったっけ」

 若者の笑いが、そこでぴたりと凍りついた。

「魔将がこの村に来たとき、何をされた?」

 笑顔は止まったままで、ぴくりとも動かない。

「覚えていないのか。おい。何か言えよ」

 声を荒げたが、答えは返ってこない。

 試しに当たり障りない会話に戻してみる。

「確かに、勇者様の活躍のおかげで救われたな」

 すると、若者は突然はじかれたように話し出した。

「そうとも、ありがたいことだ。これで平和が訪れる」

 この若者は、自分と同じ思いを共にしているわけではない。そう気がついた。

 これ以上話しても仕方がない。その場を離れた途端、若者は大声で叫び出した。

「勇者様、万歳!」

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