死神がやってきた

 ボクの部屋に死神が住みついた。


 最初は驚いたけど、聞いたらボクの命をもらうつもりじゃないらしい。ただ、ボクの部屋のベッドが気に入っただけなんだって。分かるよ。ボク自慢のベッドだもん。マットレスは程よくボクを押し返してくれるし、敷布団はひんやりとしていて気持ちがいい。掛布団はふわふわですぐに眠りについちゃうんだ。


 死神と一緒にベッドに入るのはすごい変な感じがしたんだけど、慣れたらへっちゃらさ。ボクはもう小学生だし、死神なんて怖くない。だって死神は見えるからね。暗闇のほうが何倍も怖いよ。夜トイレに行くときに死神についてきてもらうこともあるんだ。ママには内緒だからね。


 あっ、死神って大きな鎌を持って、顔はガイコツで、黒いマントを着てるって本で読んだことがあるんだけど、あれは嘘だね。ボクの家にいる死神は普通の顔をしているし、服装もジーパンに赤いTシャツ。鎌なんて持っていない。服装は毎日変わらないけど洗濯しているのかな? 匂いは何も、しない。最初驚いたって言ったけど、ボクは泥棒かと思って驚いたんだ。どう見ても普通の人間だしね。ボクが悲鳴を上げるもんだから死神は慌てちゃって、ボクに色々説明してくれたわけさ。もし泥棒ならボクの部屋にいるわけないもんね。ボクはまだお小遣いすらもらってないんだから。


 死神が僕の部屋で何をしているかだって? 本を読んだり、一緒にテレビを見たりするよ。本って言ってもボクが読む絵本くらいしかないから、パパの部屋からこっそり漫画とか字がいっぱい書いてある本を借りてくるんだ。すると死神は笑顔でボクに『ありがとう』って言うんだ。死神から感謝されたことのある人なんてボク位なもんじゃないかな?一緒に笑ったり、死神といる毎日は楽しい。


 ボクはたまに死神のお仕事について聞いてみるんだ。死神の仕事って二十四時間営業だからね。夜中にふいっといなくなったりするもんだから、気になって聞いてしまうんだ。


 すると今日は隣の家の老人の命をもらったとか、明日はここらに住みつく猫の命をもらうとか、そういうことを教えてもらえる。まあ、予想はしてたけど、死神のする仕事って一つしかないんだよ。生き物の命をもらうこと――それが死神の仕事なんだ。


 そうそう、命は全て平等にもらうらしい。


 どんな生まれであれ、寿命はみんな決まっていてそれに合わせて死神が命をもらうんだって。


 だからボクは恐る恐る聞いたんだ。ボクの寿命を、家族の寿命を。


 そうしたら、死神は平然と教えてくれたよ。


 いつ、どこで、どんな死に方をするのか、って。


 それが運命なんだって。


 冗談じゃない。


 運命なんてクソくらえだ!


 だからボクは決めたんだ。


 家族の寿命が来る前にボクが殺してやるってね。


 そしてその後、ボクは自殺するんだ。


 死神に死を決められてたまるかってんだ。


 運命を変えて見せるんだ。

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