第2話  形而上の二人




 足音が聞こえる・・・

くせ毛混じりの黒髪の女性クロは意に介せず、手に持った文庫本に目を走らす。

足音が後ろで止まり、クロの背中をポカポカと叩き出した。

「クロちゃんおはなししよ」

クロは呆れ顔で、背中を叩いていた少女に目を向けた。

年端のいかない少女は期待に胸ふくらませて、落ち着かない様相でクロをポカポカと叩いている。

ため息交じりに肩まで伸びた黒髪をかき上げ、幼い栗毛の少女の方に答えた。

「シロ、その前に叩くのヤメ!」

シロは素直に手をとめ、クロの前に回り込み膝の上にちょこんと座って次の言葉を待つ。

クロは本を閉じ一呼吸置き、言葉を紡ぎ出した。

「青は藍より出でて藍より青し」

キョトンとした顔で、シロはクロの顔を見上げる。

「お前は判らなくてもいい、あたしがただ望むだけだ」

シロは戸惑いながら、クロの言葉を噛み締める様に呟く。

クロは微笑み、次の言葉を紡ぎ始めた・・・

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