第14話 7月26日 晴れ

◇ AM9:30


 夜勤明け、玄関を抜け居間に入ると、レイが絵本を抱え独りソファに座っていた。最近、こうした姿をしょっちゅう見ている気がする。いや、気がする、のではない。実際に、昼間、そうして独りで過ごしていることが確実に増えているのだ。

 理由は明白だった。弟が、独り外出することが増えているのだ。バイトの回数が増えたり(急病のスタッフに代り臨時で頼まれたそうだが)、友だちと遊ぶ約束をしていたり、そして、はっきりそれとは言わないが、最近ではさらに“デート”が加わっているらしい。どれもレイを連れていけないものばかり。こうなると、レイが嬉しそうに見せに来たあの絵本のプレゼントですら、図書館に毎度連れて行くのが面倒になり買い与えたのでは、という考えまで湧いてくる。

「あいつめ…」

 確かに、どの予定も、16歳の夏休みには重要なものではあるが(自分にも覚えがあるし)、でも、こうしてぽつんと残されているレイの姿が何となく可哀想で、カイに対して腹立たしさすら覚えてしまう。もっとも、当のレイはあまり気にしていないようなのだが。

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