第47話 敵は
先の死体の所に行き状態を確認する。身長は155から160位でこの世界でのごく普通の背丈の者だ。
髪は肩ぐらいまでの黒髪。この者だけ他の者にない特徴があった。細い首輪が装着されていたのだ。ナイフは横向きに喉に刺さっていて、額と胸と手にも刺さっていた。投げたナイフが全て当たっていたようだ。
とりあえずナイフが邪魔なので引き抜き、血が出てくるのでヒールで傷口を治すが意外な事に若い奴だった。
所持品を確かめる為に体を触っていくが、胸が柔らかかった。つまり女である。念の為股間を触るが、やはり男性のシンボルが無く女である事が分かった。
大輔は狼狽した。そう、女を殺してしまったからだ。クレールの時はクレールが弾いた剣が自らに当り死んでしまったが、今回は間違いなく己の手で殺そうと思って殺した相手だ。大輔の狼狽振りを察したクレールが
「ダイス様いかがなされましたか?」
大輔はクレールに
「あ、ああ、ボディチェックして」
と一言言う。
するとハッとなったクレールが
「女なのですね。しかも首には特殊な隷属の首輪がされてますね。服を全て剥ぎ取り他に何か特徴がないか見てみましょう」
クレールが服を脱がしにかかるので、大介はクレールの手を取り止めた。「敵であり、死んだとは言え女性だ。皆の前で裸を晒すのはかわいそうだろう?ちょっと待ってくれ」
大輔は予備のテントを出し、クレールとアマゾネスの3人のみを引き連れ中に入る。シートを出しその上に死体を寝かせ、血を拭ってやる。
よくよく見るとかなり整った顔立ちをしていて、歳は16前後であろうか。この歳にしては妙に強かった。一旦外に出て隊長等に確認したが、団員の中で死亡者はいなかったようだ。
そして大輔はこの女を蘇生してやろうと決意し、先ずは検分をと思い、テントの中に入りアマゾネスに服を脱がせるように指示をした。特に所持品の中でこれといった物はなく、魔法の補助具だろうか指輪をはめている程度で、あとは懐にナイフを入れていたりとごく普通の冒険者がしているような装備位しかなかった。しかし、ナイフの一撃により胸に刺さって壊れてはいるが、胸には魔法陣が刻まれた痕があった。アマゾネスにケイトを呼んでくるよう指示をすると、程なくしてケイトを連れてきた。
まだ眠い目をこすっており、本来は睡眠が必要なのだが大輔はケイトに確認した。
「なあケイト、もう壊れているがこの魔法陣ってなんだか分かるか?」
ケイトは魔法 陣を調べて行く。
「アッ!これは遠隔から誰かの魔力をこの者に送り込む為の術式になります。
これを刻んだ者は彼女を通して魔法を発動した可能性が高いです。上位の者になるとそういう事ができると聞いた事があります。どうなされますか?この者を蘇生し尋問されますか?」
大輔は皆を見回すと頷いている。そしてアマゾネス達が体を隅々まで調べ上げていていらないことを言う。
「団長こいつ生娘でしたよ。やっちゃったらどうですか?」
大輔はそんなことを言う馬鹿にデコピンを食らわせ、
「俺は死体とそんな事するつもりはないよ。死者に対する冒涜だよ」
と言うと
「じゃあ生き返らせてからすればいいじゃないですか?団長を亡き者にせんとしたのよ。手篭めにしてやれば?性的に支配して吐かせればよいのよ!」
と三人でまたいらぬことを言ってくる。それはともかくそれなりに綺麗なボディラインをしていて、ケイトとクレールがいなければ思わず頷きそうなぐらいになっていた。
「ああ、こいつの言動は確かに男のそれだったんだよな。やはり操られていたのだろうか?」
と大輔は感じていて呟いていた。ケイトは更にに続けた。
「はい、確か生娘の人格を壊し2日間体を乗っ取る術式があったと聞いた事があります。正確には人格を壊すのではなく、乗っ取られた事に耐えられる者がほぼいない為、大抵の者の精神が壊れてしまうという事です。彼女がどうなっているかですが、壊れていた場合は廃人になっていますので、生き返らせた後すぐに殺して埋葬してあげるのが彼女のためだと思います」
大輔は動揺していた。
大輔は死者蘇生をする事を決意し、まず奴隷解放してその後新たな奴隷にした。そしてこの危険極まりない魔法陣を周辺の肉ごと切り裂いて除去し、ヒールで直していく。
動揺していた為に慌てて蘇生を開始したが、一つやり忘れたこ事がある。そう、服を着せず裸のまま蘇生を始めたのだ。その事に誰も違和感を覚えなかったのであった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます