第27話 ジェームスは
大輔は蘇生を実行した後、直ぐに視界に入らないように床に座り込んで覚醒を待った。
程なく息を吹き返したのが分かる。
彼女は目を見開き周りを見ていた。
「あの、一体何が?私は死んだのだと思っていましたが」
「気がついたのね。私はケイト。あなたは決勝で確かに亡くなったわ。弾いた剣が運悪く首を切り亡くなったの。覚えていて?」
「はい。私の方が強かったのに、まさか私が弾いた剣で自ら死ぬとは。しかしそれでは何故私は生きているのでしょうか?」
「我が主があなたに蘇生の魔法を使われました。顔も綺麗になってますわ。感謝するのよ。そして奴隷にしているから、我が主に逆らわず感謝してご奉仕するのよ」
「そうか私は奴隷にされたのか」
「はい我が主を襲う可能性がありますので、大丈夫と思うまでは奴隷にするそうです」
「なぜ私を生き返らせてくれたのだ?ケイト殿の主を襲うのだ?ケイト殿のご主人に是非合わせてはくれないか?礼を言いたい」
大輔はそのまま後ろを向いた状態で声をかける。
「俺がそうだよ。君はジェームスと言ったな。本名は何だ?それと君は敵討ちだと言っていたがどういう事だ?」
「はい。我が主により私の異母兄弟であるダリルとダグラスの敵討ちをするように厳命され、敵討ちを果たすまで戻ってくるなと言われて送り出されたのです。しかしそれも叶わなかった。私はどうすれば良いのでしょうか?」
「そうだな、まずはこれを見るのとお前はもう敵討ちをしようとは思わないのか?敵討ちの相手を恨んではいないのか?」
「はい。あの者達は私の異母兄弟ではありますが、彼らは本妻の子、私は妾の子として育てられ、私に剣の才覚があると分かり、それからは騎士をさせられてはいますが、特に兄弟として育ったわけでもなく、情がある訳ではありません。また、敵の方に恨みがあるわけではなく、命ぜられ、従わざるを得なかっただけです」
大輔は顔を見せると一瞬ジェームスの顔が強張ったが、特に襲うような気配はない。
「ジェームス、君の本当の名前が何かわからないが、騎士ジェームズは死んだんだ。なあ、女としてやり直すつもりはないか?」
「私を愚弄するのですか?」
「君が男装した女性であるという事は分かっているんだよ。君の葬儀が皆の前で行われ、闘技場で誰がどう見ても死んでいるんだと理解されている。だから自分の家に愛着があるわけでなければ騎士ジェームスの名を捨てて本来あるべく姿、すなわち女性として生きてみないかと言っているんだ」
そして大輔はスマホで撮っていた葬儀の模様を見せた。司会が闘技中に果てた騎士ジェームスの魂よ安らかに眠れなどと言った後に、台座毎に全てを燃やし始めた様を見せたのだ。
「これは驚きました。一体どういった魔法なのですか?」
「いや、これは魔法ではなく異世界の文明の利器だよ。後で説明するが、見ての通り騎士ジェームスは灰になった。君が燃やされる前の日に俺が台座に忍び込み死体を盗んだんだ。そして蘇生したというような状況だ。なのでもう男の振りをしなくてもいいんだ。君の外観であれば、ちゃんとした女性の格好をすればもうこれがかつてジェームスと呼ばれた者とは誰も思うまい」
ジェームスは分かったような分からないような顔をして首をひねっていたのであったが、中々可愛いなと感じる大輔であった。
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