第14話  奴隷4日目

 大輔は翌朝になり漸く目覚めた。

 先日のようにケイトが手を握っていて、また同じ状況だった。


 大輔が目を開けるとそこには目を赤く腫らしたケイトがいた。


「ごめんねケイト。また迷惑をかけたようだね。どれぐらいの時間が経ったのか教えてもらえるかな」


「ダイス様のバカ!死んじゃうんじゃないかとまた心配したんですからね!うん、今は一晩経ってそろそろ朝食の時間ですよ。はいどうぞ」



 そうやって水の入ったグラスを差し出す。大輔は受け取って一気に飲み干しグラスをテーブルに置き


「ありがとうケイト。いつも助かるよ。それとちゃんした服を買ってもらったんだね。よかった。よく似合っているよ」


 ケイトは白いワンピースを着ていてなかなか似合っていたので、似合うよと褒めるとケイトはニコニコしながら


「うん。ありがとう。本当に良くして頂いて感謝してます。それよりお腹減ったでしょ?今朝食を取ってくるのでちょっと待っていてくださいね」



 大輔は食堂に行くには体がだるかった。なので今回はケイトにお願いしたのだ。ほどなくしてパンやらスープを二人分持ってきたケイトが現れた。


 そしてささやかな朝食を二人で頂き、身支度の後座長の所に行かなければならなかった。

 食後に座長の部屋を訪れた。丁度ガラグもいて、新人戦についての話になった。今日からしばらくは筋力トレーニングなどの体力面の強化を行うことになった。

 技術的な方は今の段階では特に教える事が無さそうだが、それよりも技術があってもそれを使いこなすだけの体力がない方が問題であった。

 今日もこれから練習場で訓練を行う。それと行動範囲に変更をかけられた。闘技場の外周を走り込めと命ぜられたからだ。闘技場の中は駄目だが、外であれば多くの者が走り込みをして体力づくりを行う。但し、奴隷の間は基本闘技場の外に出ることが禁じられている。なのでトレーニングのために闘技場の外周を走る許可をもらったのだ。


 そうして今朝のトレーニングに参加すべくガラグと座長の部屋を後にするのであった。


 まずはランニングで、闘技場の周りを回る。闘技場の入口の所がアンダーパスになっていて競技場の外周は完全なランニングコースになっており、メンテナンスでもしていない限りランニングの邪魔をする者はいない。


 次に軽く腕立て伏せやスクワットなど体力作りの為のトレーニングを行う。そして組み合っての格闘技だ。力が拮抗したりなどして力試しをしたりする。そういうのでも筋力がつくのと戦い方を覚えるのと一石二鳥なのだと言う。


 実際のところは分からないが、大輔には格闘術がない。せいぜいテレビで見知った一般的な柔道技の知識だけである。

 当然だが知識はあるが技術がない。体が出来上がったらいずれは柔道技も試してみようとは思っていた。


 先日のように剣先が折れたりして武器がなくなった時に格闘術が頼りだ。それを先日思い知ったのた。


 本当は戦いたくはないが、逆らえない状態の為戦い方を覚え、生き残る術を身につけねばならない。なぜか武器を使った戦闘ができるというよりも、どういうわけか殺した相手のスキルを自分に合わせて勝手に変更され、モノにしているという事が分かっている。


 ケイトが大輔の事を勇者だと言っていた。漫画や小説などにある異世界召喚というやつだろうか?と不思議がっていた。ただ召喚された割にはいきなり砂漠に放り出されて奴隷にされているという不遇な状況だ。大輔はだんだん腹が立ってきて組み合っているガラグに大外刈りをかけてしまった。


 なぜかあっさり決まり、ガラグが驚いていた。咄嗟の事とはいえさすがに猛者である。受け身を取ってダメージを最小限に抑えていた。


「い坊主今のは何だ?見た事のない技だな?」


「はい、これは私の国に伝わる格闘術です。自分も見た事は有りますが、行った事はなかったのですが、物は試しとやってみたらたまたま決まっただけです」


「そうか。お前の体は確かに格闘をやっていた者の鍛え方ではないのが分かるが、知識はあるのだな。良かったらその技というのを他にも持っているならば教えてくれないか?」


 流石に猛者である。一度見ただけで大輔が他にも技を持っているというよりも知識を持っているというのを見極めていた。


 大輔も分かっている。技を持っている者と練習した方が上達も早いし、受け身の練習もできる。


 確か柔道の練習は一人で飛んで畳に倒れこんだ時に受け身を取るという練習をしたのではなかったかと思うのだが、残念ながら畳はない。練習場の地面は土である。しっかり受け身を取らないとあっという間に大きな怪我をしてしまう。


 柔道の技もテレビで見て知ってはいるがか掛方をきちんと分かっていないので、ゆっくりと足を絡めたりして技を試している。ガラグの方はそんな大輔が何をしようとしてるのかをいち早く察知し、こうではないのか?と大輔や仲間にに技を掛て見せて、それだそれだという感じで逆に教えられていたりもする。元々大輔はやる気にさえなれば学んだ事の吸収はかなり早いのだ。但しやる気が出ればである。今は自分の為というよりもケイトの為に頑張らねばと思い、やる気スイッチが入っているのであった。


 時間が経つのは早いものである。あっという間に夕方になり、食事を終えた頃には暗くなっていた。


 大輔達は沐浴を済ませ部屋に戻るが、これから日課になって行くが、大輔はケイトにマッサージをして貰う。下半身は何ともないのだが、上半身はとにもかくにも悲鳴をあげていた。


 走る時には使わないそういう筋肉を使い酷使しているからで、少し触られるとウッと悲鳴を上げるぐらい痛みが激しかった。


 ケイトはそんな大輔の頑張る様子に涙していたが、時間をかけ丁寧にマッサージしていく。そしてだ大輔けはケイトの真心の籠もった手の心地良さにありがとうと一言呟いて眠りに落ちるのであった。

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