第58話:元勇者、本陣へⅡ
「――貴様、何者だ?」
デルマは腰に付けている剣を抜き空から降ってきた何者かへとそう問いかけた。
他の者達も剣や槍を構えて警戒する。
その仮面を付けた者はノワール。つまりはレイドであった。
レイドは地面に下り突き刺さった大剣を引き抜き肩に担ぎながらデルマの問いに答えた。
「私はノワール」
答えた瞬間、レイドの周囲を囲む殺気が一気に増した。それどころか今にも襲い掛かってきそうな程の殺気である。
「何をしにここへ来た?」
「何をしに? わかりませんか?」
レイドは周囲へと殺気を放ち大剣を構えた。
「こういうことですよ」
「――ッ!? や、殺れ!」
周囲を囲んでいた兵士達が一斉に襲い掛かってきた。
これなら逃げられないと思っているなら名違いである。
「数で倒そうと考えているのなら――」
一閃。
襲い掛かってきた兵士達が血飛沫を上げながら円周状に吹き飛び地面に無残に転がった。
「――無駄です」
この一回の攻撃でレイドの周りを囲んでいた数十名の兵士達が死んだのである。
そんな光景にデルマとキーリス達は唖然呆然といったようであった。
たかが一撃の攻撃で数十名もの兵士の命が散ったのである。驚かないはずがない。
「こ、これでも精鋭ではあるのだぞ……それを一瞬で……」
レイドは大剣を通常サイズへと変えた。
「魔剣、か。厄介な……」
苦虫を噛み潰したかのような表情をするデルマ。
「ここは私が」
そんな中デルマ達の後ろから、三人の騎士が武器を片手に前へと現れた。
「裏切者には私達が相手をしてやる」
「貴様にはここで死んでもらう」
「生きて帰ると思うなよ?」
それぞれがそんな言葉をレイドへと告げた。
「勇者ですらこの三人、三騎士に苦戦していたのだ。ノワールも簡単には勝てまい」
三騎士とは、王国が誇る騎士である。
実力は三人とも大会などで連続優勝するほどの強者。そう簡単に勝てるはずがない。そう思ったデルマであったが……
「誰にですか?」
デルマの頬へと何かが飛び散った。
頬を拭う確認するとそれは――血であった。
そして武器を構えていた三人の騎士の首が、ズルっと地面へと落ち体が遅れて倒れた。
「……え?」
何が起きたか分からずに困惑するデルマ。
レイドは単に剣を振るっただけ。
この場の誰もがレイドが攻撃したのを視認できなかっただけの話である。
「何が起こったのだ……三騎士が殺られ、た……? それも一瞬で? ありえない。ありえないありえないありえない!!」
「ありえない」と連呼するデルマ。
周りには側近であるキーリス達と数名の護衛がいるのみであった。
しばらくして木を取り戻したデルマは自らが戦おうと剣を抜いた。
「貴様らも戦うのだ!」
そう言って振り返ったデルマは――後方に広がる血の海を目にした。
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