第263話 魔王軍のメイドは女神様
その静かな湖面には、今二人の女性が佇んでいる。一人は人魚の姿をした女性、もう一人は神々しい雰囲気と薄衣を纏う女性だ。
その神々しい女性――豊穣の女神アンネローゼの近くにアラタ達が下りてきた。その時、人魚の女性であるウェパルが悔しさと驚愕が入り混じった表情でアンネローゼを睨んでいた。
「あたくしのメイルシュトロームが屈服した……いったいどうやって?」
「そんなに難しい事ではありません。あなたのメイルシュトロームと逆回転の渦を発生させて流れを相殺しただけです」
「神性魔術を自在に使えるという事はやはりあなたは本物の女神……」
「ええ、そうです。現在は、女神兼魔王専属メイドのアンジェリカとして活動中です」
アンネローゼもといアンジェがしれっと言った内容に現場は混乱した。
「ええっ!? アンジェちゃんが豊穣の女神!? でも、アンジェちゃんは人間……どうなってるの?」
「神は精神体のような存在だから現世では活動出来ないはず。だからこそ、
セレーネとコーデリアがまじまじと女神化したアンジェを見ると、視線に気が付いた女神兼メイドが説明を始める。
「簡単な理屈です。私はこの現世で活動するために人間に転生したのです。女神としての力はほとんど失ってしまいましたが、こうしてウンディーネと精霊魔術の最終形態〝
「……なるほど、それで納得しましたわ。あたくしがここに来た理由は大きく分けて二つ。一つは魔王にかけられた封印の状況の確認。もう一つは、シェスタ城塞都市で確認された神性魔術の使い手を見つける事。あなたがその使い手だったわけですわね」
「ええ、そうです。あの時、私は神性魔術〝リザレクション〟を使いましたから。……やはり、気付かれていたようですね」
「その通りですわ! あの方は全てお見通しですわ!」
ウェパルは自分の事ではないのに誇らしく胸を張っていた。そんな一人コントがどうでもよくなるくらい、皆は「あの方」と呼ばれる存在が気になっていた。皆を代表してアンジェが探りを入れる。
「ウェパル、あなたの言う〝あの方〟とはいったい何者なのですか?」
「そんな事をあなた方に話すと思いまして?」
「そうですか……どうせ、十司祭に関わる
アンジェの煽りにウェパルは憤慨する。そして――――
「アスモダイ様は、そのような小者ではありませんわ! あのお方こそ、破壊神様を除いた存在の中で最も偉大なお方なのです。例え女神であろうと、アスモダイ様を愚弄するような言動は――」
「皆様、十司祭の要注意人物の名前が判明しましたよ。〝アスモダイ〟と呼ばれる方だそうです」
「ああーーーーー!! あなた、あたくしをハメましたわね!」
女神なメイドに踊らされたアホの子は、またもやケアレスミスを犯してしまう。感情を爆発させるウェパルとは対照的にアンジェは冷静だった。
「私があなたをハメる……ですか? そんな人聞きの悪い。むしろ私はハメられるほうです!」
ネグリジェ姿の女神は、冷静かつ自然に下ネタを口にした。神聖な雰囲気漂う美女によるはしたない言動はスヴェン達の反応をフリーズさせたが、普段からアンジェの下ネタに慣れているアラタ達は、その通常運転ぶりに安心するのであった。
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