第235話 ロックVSガーゴイル②

「今度はこっちから行くぞ!」


 ロックは〝瞬影〟で距離を詰めつつ、敵に接近すると腰を落とし水面に手をつきながら足払いをかける。

 ガーゴイルは空中に飛んで逆にカウンターを仕掛けようとするがロックの姿を捉える事は出来なかった。


「なっ!? 足払いで水しぶきが立って!?」


 ロックの足払いで発生した水の壁が2人の間に割って入り、互いの姿を遮断する。だが、ガーゴイルはそんな事はお構いなしと右前腕の一部の形状を変化させ、片刃の剣を作り出し水の壁ごと前方の空間を薙ぎ払う。


「それで目隠しのつもりか、小僧! これで真っ二つだ! エナジーブレード!!」


 だが、水の壁の向こうには誰もいなかった。強烈な無属性の魔力の斬撃が水面を切り裂き分断された水が元の形に戻ろうと自らの傷口を塞ぐように集まって来る。


「! いないっ!? 何処に――」


 その時、ガーゴイル直下の水中から勢いよく何かが飛び出し、その腹部に当たった。それを目の当たりにした瞬間、ガーゴイルは目を剥いた。

 

「油断しすぎだぜ、このクソコウモリ! 獅子王武神流ししおうぶしんりゅう破砕掌はさいしょう!!」


「ゴブゥアアアアアアアアアア!!」


 ロックの魔力を十分に乗せた一撃がガーゴイルの腹部を打ち抜き、さらに上空へと石造りの身体を舞い上げる。


「ここだ! 鉄無双くろがねむそう!! うおおおおおおおおおおりゃあああああああああああ!!」


 練り上げた魔力を全身に纏い、強化されたロックの拳が蹴りが連続でガーゴイルに叩き込まれていく。

 その衝撃でさらに空中に跳ね上がった石像の悪魔を追い越し、ロックは上空から魔力と自重に落下速度を加えた蹴りを見舞った。


「これが獅子王武神流基本コンボの最後の一撃! 破断脚はだんきゃく!!」


 ロックの破断脚はガーゴイルの背部に直撃し、その勢いのまま水面に激突、巨大な水しぶきを上げた。ロックは水面を滑るようにして落下場所から距離を取り、敵の魔力を感知しようと集中する。


(今のが地上戦だったのなら、それなりのダメージにはなる。けど、水面がクッションになって思ったほど威力が出なかった。ガーゴイルは確実に生きてる。何処に行った? 魔力感知に引っかからないとなると故意に魔力を消してるのは間違いない。次に奴はどう攻めてくる?)

 

 ガーゴイルの動向を探るが一向に魔力感知に反応がない事を不気味に思うロック。先程の会話から推測した相手の性格を考えるに、油断したところを狙ってくるのは明白であり、どのような攻撃に打って出てくるのか思考していた。


(そう言えば、俺が攻撃を仕掛けた時、あいつはギリギリで躱してカウンターを狙っていた。あれは俺が最初にカウンターをやった事への報復だったのか? だとしたら、あいつは俺の攻撃方法をそのまま返してくる可能性がある? それなら――!!)


 思考が結論に到達した瞬間、ロックはバックステップでその場を離れた。その直後、ロックがいた場所の真下から灰色の魔力を纏った刃がせり出し、それに続いて魔力の主――ガーゴイルが姿を現した。

 奇襲が不発に終わった事に対し、苦々しい表情をしながらロックを睨み付ける。その身体のいたる所にはロックの獅子王武神流による連撃で出来た亀裂が見られた。


「あっぶねーな、この野郎! 俺がやった戦法を真似しやがって、どういうつもりだ!?」


「自分が使った戦い方をそのまま返されて倒される。これに勝る屈辱はあるまい? 俺はその時の敵の悔しがる顔を見るのが……大好きなんだ!」


 ガーゴイルの無機質な顔に醜悪な笑みが広がっていく。ロックはそれを見て背筋が凍るような感覚とフツフツと煮えたぎるような怒りを感じていた。


「どうやら俺は勘違いしていたらしい。1000年前の戦争を生き残った猛者だと聞いてたから、戦いに関してはアロケルのような武人だと思っていたが、そうじゃなかったみたいだ」


「おやおや、それはそれは期待を裏切ってしまって申し訳ない。お詫びと言っては何だが、ズタズタに切り裂いて実力の差をその身に刻んでやろう」


「上等だよ、この石造りのコウモリ野郎!」


 2人はその場から飛び出し、熾烈な接近戦を開始した。

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