第149話 3匹が斬る!

 アラタ達と別れシェスタ城塞都市の中心に当たる創生教教会へと到着したセレーネ、ドラグ、トリーシャの3人はアンデッド化した魔物を片っ端から倒していた。


「全く、どれだけのアンデッドが入り込んでるのよ! 倒しても倒しても次から次へと湧いてくる!」


「トリーシャ、弱気は禁物だ。ともかく視界に入った敵は倒さなければ被害が増える一方だ」


「それは分かっているけど、このままじゃジリ貧よ。この状況で十司祭が現れたらひとたまりもないわ!」


「むぅ……それはそうだが」


「他の皆も今頃同じように頑張っているはずよ。町の中心にいる私達が敵の数を減らせば、周囲にいる皆の負担がかなり減るわ。2人とも頑張りましょう!」


 たった3人で大量の敵を相手取らなければならない状況で互いを励ましながら、終わりの見えない戦いを継続する。

 アンデッドの種類はアストライア騎士の者は既にいなくなり、ファングウルフを始めとする4足獣のものが多量にみられる。

 そのような中、異彩を放つのがカマキリ型の魔物であるキラーマンティスのアンデッドだ。

 キラーマンティスは両腕の肘から先が巨大な鎌のようになっており、その切れ味は簡単に人間の胴体を真っ二つにするほど鋭い。

 例えローブをまとっていても、魔力が低ければ常人同様に身体を分断されてしまう強力な魔物だ。それが何体もアンデッド化されて、この戦いに投入されていた。

 そのため3人はキラーマンティスの位置に気を付けながら、4足獣のアンデッドを倒している状況だ。


「2人とも離れて! 遠距離で仕留めるわ!」


 セレーネの指示に従い、キラーマンティスから距離を取るトリーシャとドラグ。2人が安全な位置まで退避した直後、セレーネは既に展開していた魔法陣に魔力を込めてカマキリ型の魔物に放つ。


「闇にかたどられし黒き槍よ、我が敵を貫け! シャドーランス!」


 間髪入れずに放たれた闇の槍は正確にキラーマンティスの頭部を貫き吹き飛ばす。頭を失った巨大カマキリは数回身体をひくつかせて動きを停止させた。


「やった! キラーマンティスまずは1体目ね」


 トリーシャが次の標的に向けて動き出そうとしたその時、頭を失い活動を停止したはずのキラーマンティスが彼女の後方で再び動きだしていた。前腕にある巨大な鎌を振り上げ、トリーシャに向けて今にも切りかかろうとする。


「!! トリーシャ、後ろだ!!」


 ドラグが彼女に迫る危険を察知し伝えるが、それと同時にカマキリの魔物はその巨大な刃物をトリーシャにふるう。

 その鎌がトリーシャに当たる瞬間、大きな金属音が周囲に鳴り響く。その音はキラーマンティスの鎌とトリーシャの槍がぶつかり合った音だった。


「あっぶないわね~、うっかりしてたわ。確かキラーマンティスは頭を失っても暫く生きてるんだった。アンデッド化してたら、尚更よね!」


 トリーシャはカマキリの鎌を槍で薙ぎ払い、隙を突いて肘を切り裂く。巨大な鎌腕は宙を回転しながら少し離れた地面に突き刺さった。

 片腕を失いながらも攻めの姿勢を崩さないキラーマンティスに、ルナールの槍術使いは怯むことなく間合いに入る。


「これでも食らえ! 五月雨さみだれ突き!!」


 槍による目にも止まらない乱れ突きがキラーマンティスの胴体に打ち込まれていき、数秒後にはその身体は穴だらけになり地面に倒れるのであった。


「――ふぅ! これだけやれば生命力の高いこの魔物もさすがに死ぬようね。……アンデッド化しているから余計に性質が悪いわ」


「トリーシャ、よく気づいたな。さすがだ」


「まあね、キラーマンティスは私の地元に結構現れるから、昔よく戦った事があったの。でも最近はお目にかからなかったから、頭がなくなっても大丈夫っていう特性をすっかり忘れていたわ。気を付けないとね」


「トリーシャちゃん!!」


 いきなりセレーネがトリーシャに抱きついてくる。あまりの勢いにトリーシャの顔面はセレーネの胸に押し付けられ、そのまま彼女に思い切り抱きしめられてしまうのであった。


「ごめんね! 私の攻撃が中途半端だったせいで危険な目に遭わせて! 次は気を付けるわ!!」


「むぐっ! むぐぐぐぐぐ~!」

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