23.キース爺さんの不始末
仕切り直して、俺は王女と向かい合って話を始めた。
「いったいこの国はどうなってるんだ?これでいきなり殺されそうになったのは2度目だぞ?」
「誠に申し訳…。」
「いやいや、勘違いしないでくれよ。俺は別に謝れって言ってんじゃねぇ。俺は説明してほしいんだ。なんで俺は2度も殺されそうになったんだ?それも国王が変わったのにもかかわらずまた襲撃に会いそうになった。それを連れてきたのが王女だ。俺が疑問に思ってもおかしくないよね?」
俺は逃げ場がないようにそう言った。
この王女、謝って済む問題じゃないことはわかってるんだろうけど、どうすればいいのかてんで思いつかないようだからね。まず説明してもらおう。
「はい。少し長い話になります。事の起こりは先ほど亡くなった王の先代、キース王の頃が事の発端でした。
キース王は傍若無人な王として恐れられています。そしてその子供であるユヒト王も同様に残虐で自分たちの富にしか興味のないような王でした。
キース王のころから、近隣他国に侵略を行い、様々な国を敵に回しています。
いくつか滅びた国もありました。
そしてその性格をそのまま受け継いだユヒト王も数年前に隣国に戦を仕掛けたのですが、隣国に惨敗、キース王が侵略して得た土地をユヒト王が奪い返されてしまったのです。
それが2年ほど前になります。その敗北の責任を辺境の伯爵に取らせた後は国内の引き締めのために重税を課すようになりました。
今では民心は離れ、2代続いての暴君に、民も疲れ切っておりました。
しかし、ユヒト王たちは贅沢をやめませんでした。
国土は敗戦のために縮小しているのにも相変わらず贅を尽くした暮らしを求めました。
そこに見たこともない様々な商品を持った商人が王城に来られました。
その出所を聞くとメライト領とのこと。
しばらく情報を集めているとメライト侯爵が謁見するために王都に来られるという報を聞き、王たちは待ち構えていたのです。
それらの商品を独占し、富に変えるために、異邦人さまを捕えるつもりでいたようです。
その悪だくみを聞きつけて、タクマ王子と私は機会をうかがっておりました。
おそらく異邦人さまに無礼を働くだろうこと。それを理由にそのものたちを粛正するために動く手配をしておりました。
先ほどの執事とメイドは先代王のキース王が私につけてくれた者たちでした。」
「ということはその先代王はまだ生きてるんだな?」
「はい、後宮にて暮らしております。」
「おい、マローン。王子が危ないぞ。どうする?」
とマローンに聞いた。
王女はびっくりしていた。
いやいや、今の話の流れで行くとキース王も当然処分の対象だわな。
むしろ、王子が殺される方の確立が跳ね上がってるんだけど。
「もちろん、助けに行きたいが、トモロウも手伝ってくれないか?」
「まあ、家族のお前が言うんだからな。手は貸すが、王女さん。これはゼクウ王国に貸しですよ?あとで清算してもらいますからね。」
と王女にくぎを刺しておいた。
同情やお人好しで動いたと思われたら、この先どれだけ働かされるかわからない。
しっかり搾り取ってやる。まずは初代の文献だな。それに魔道具。うん。それで手を打とう。
「はい。お兄様をお助けください。お礼はいかようにも致します。」
と王女は答えた。
「よし、それじゃ隊長さん。完全武装で乗り込んでここの王国に日本国として貸しを作っときましょう。」
と先ほどから状況を聞いていた自衛隊の隊長に指示を出した。
「わかりました星野さん。今回の我々の行動責任者はあなただ。あなたの指示に従いますよ。どうせここで起こったことは非公開になるんでしょうからね。日本国でも、ゼクウ王国でも。」
と言ってにっこりと笑った。
肝の座ってる隊長さんだ。改めてこの人たちの人選に感謝した。
ここに中途半端にポンタたちを残すより、一緒に行動したほうが安全性は高い…か。
仕方がない。みんな連れて行こう。
俺はみんなを促して、馬車のところまで行く。するとすでに連絡が入ってたみたいで
「こんなこともあろうかと…。」
と、武器庫にしていた馬車のほろを外した。
すると中にはこれでもかってほどの武器弾薬が詰まっていた。
それぞれバイクに分担して搭載し、この武器庫ともう一台の馬車を連結させて1台にした。
うん、これって初めからこうするように考えてたってことだよね。
そうじゃないとこんなにかっちり嵌ることないもんな。
空いている方の馬車にみんなは乗り込んでもらった。
武器庫の方も半分は空いているので、若干の余裕はあるだろう。
こうして2台を連携させた馬車を2頭のバトルホースで引く。
よく見たらこの側面に立ってるホロの部分。内側は鉄板になってるよね。これなら矢も通さないだろう。
さて、俺たちはバイクに分乗することになる。
二人一組で後ろの方が銃を扱う。
そしてこの2台はサイドカーに変更できるんだ。
そしてその2台には機銃を設置した。
機銃の操作は夜警を分担してくれてた2人になる。
あと3台のバイクに俺が1台もらう。
そして残りの2台のうち一台に隊長が後部席に乗り、銃を扱うことになる。
俺の後ろはマローンだ。もう一台にはスフィアが乗った。
スフィアは後ろから魔法を放つことに専念する。マローンも同様だ。
残りのポンタ、ポン吉、ポン子、菜月、イザベル、マルクス、シャーロット、そして第一王女のミーシャは馬車に乗り込んだ。メライト騎士団はこの馬車の守りを固めてもらうことにした。
菜月には無線を使った状況の報告を逐一行ってもらう。
武器の補充も必要だからね。
残りのバトルホースと空馬車もつれていくことにする。
騎士団の面々には各自の馬で出撃してもらう。
さて、まず俺たちが露払いしないとね。
拡声器を使って門から少し離れたところから声をかけた。
「え~。門番の諸君。俺は異邦人の星野友朗だ。先ほど場内での襲撃に続いて、またしても宿舎で襲撃にあった。どうやら先代のキースってバカ爺がよこした刺客のようなんで話をつけに来た。すぐにその門からどきなさい。逆らうものは皆殺しにします。」
俺はそう言ってから素早くロケット弾を構えた。
先ほどその威力を知っているので門にいた兵士たちは慌てて飛びのいた。
俺たちはその隙に門の中に入り込み、門番を制圧し、門を開いた状態にして、メライト騎士団に死守するように頼んだ。
俺たちはそのまま場内に入り込んだ。
ミーシャにトランシーバーで聞きながら道を進む。
場内であろうとお構いなしにバイクを走らせる。
ようやくドン付きにある王宮にたどり着いた。
この中にキース爺がいるようだ。
閉めてある門をロケット弾で吹っ飛ばした。
俺たちは空いた門をそのまま中に進んだ。
合図して俺たちは腕で目をふさいだ。
フラッシュボムという閃光弾がさく裂して、バタバタと人が倒れている。
俺たちは耳栓とインカムのイヤホンで耳がふさがれているので、被害はない。
そのままドアというドアを爆破しながら、進んでいくとしなびた爺が腰を抜かして床にはいつくばっていた。
「お前がキースって爺か?」
俺はそのおもらし爺さんに聞いた。
「わ…わしがだれだかわかっておるのか?わしは先代の国王じゃぞ?」
「おう、じいさん。あんたを探してたんだ。お前さん、俺に刺客を送ったな。まあ、どっちでもいいんだけど、タクマ王子は無事か?」
「な…何のことじゃ?」
「いや、返事が聞きたかったわけじゃないんだ。ただお前が何で死ななきゃならないのかは知っておいた方がいいと思ってな。」
「な…な…」
俺はライフルの引き金を引いて爺さんの頭を打ちぬいた。
付近を捜索すると、地下牢からタクマ王子を救い出した。
やはり、もうつかまってたんだな。
タクマ王子には役割があるからな。すぐに殺すとは思わなかったがやはりとらわれていたか。
タクマ王子はなぜ俺たちが助けに来たかがわかっていなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます