秋乃は立哉を笑わせたい 第4.9笑

如月 仁成

プロローグ


~ 八月二十一日(金)

      プロローグ ~



「ほら、凜々花も早く準備しろ」


「舞浜ちゃんがくれたアイス食ってからね!」


「愛されてんなあお前は」



 凜々花のことも心配だが。

 俺も急いで準備しねえと。


 海の時はまるで仕込めなかったからな。

 舞浜を無様に笑わせるために。


 気合入れるぜ!



「おにい、それ面白グッズ?」


「ああ。凜々花から合格貰った面白ネタ、今回は沢山持って行こうと思って」


「ふーん。ハルキーも舞浜ちゃんも、おにいよか断然おもろいもんね」


「ぐはっ!」


「まあ、せいぜいがんばったんさい!」



 ちきしょう。


 合格くれた本人から既に負けを宣言されて。


 あっという間に自信が無くなったが。


 でも、この会心のネタなら。


 きっと舞浜を無様に笑わせることができるはず。


 そんな自信作は。



 アイスの棒。



 何度も練習して。

 ばれないようにアイスの棒を袋から抜けるようになった俺。


 そして代わりにこいつを差せば。

 爆笑必至のネタが完成だ。



 わざわざ焼き印までして。


 棒に書き込んだその文字は。




 あ


 た


 み




「きゃははははははは!」



 ん?


 なんだ、そこからこのネタが見えたのか?



「そうか。やっぱり俺のネタ、何度見ても笑えるか」


「へ? おにい、なんかやってた?」


「……これじゃねえのかよ。紛らわしい。何見て笑ってたんだ?」


「舞浜ちゃんのネタ……、ぷくくっ! きゃははははははは!」



 腹を抱えて笑う凜々花。


 こいつが突き出してきた物も。


 アイスの棒。


 そこに書かれていた文字は……。




 あ


 ・


 た


 ・


 し

 ?



「うはははははははははははは!!! 新婚さん!」



 ちきしょう!


 負けねえぞ、俺は!



 ……でも。

 ひとまず俺の棒は置いて行こう。


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