第20話 最弱な戦士4

 ルカはツインルームの後ろにある、一般車両に連れて行った。

「ここが、一般車両だな」

 仕切りが区切られ、一部屋毎に三段ベッドが二台並べられ、ベッドにカーテンが掛けられ、中が見えない所もあったが、大体の所はカーテンがオープンとなり、家族連れや一人旅の客等がいた。

 同じベッドとなった乗客は、他の客と仲良くやっている一幕も見えた。その部屋がすっと何両にもまたがってある。

 沢山の客を収容する為の施設となっていた。

「へー。今度はこっちにも泊まってみたいな~」

 カードゲームで遊んでいる客を見ながら言った。

「まあ、それも楽しいよ。ゲームしたり酒酌み交わしたりな」

「ここに泊まった事あるの?」

「ああ、ギギをバイクと一緒に貨物に預けたけどな」

(ギギも可哀想ね)

「次に行こうか」

「ええ」

 二人は隣の車両に向かった。


 倉庫を通り、列車の一番後ろに出て、海を眺めていた。

「うわぁぁぁ、キレイ」

 ニアは感動していた。

 カメラのシャッターを何度も押す。

 海が宝石のようにキラキラ光、魚も跳ねていた。

「ああ、そうだな」

 風が少し強いが、そんな事は気にならなかった。

「旅に出てよかったよ」

「そう言って貰えると嬉しいよ」

 しばらく、海を見ていた。

「次行く?」

「うん」

「次は前だな」

 ルカとニアは前の車両に向かった。


 次に二人は、ツインルームの、前の車両に連れて行った。

「ここは娯楽室だ。主にツインやスイートに泊まる客が遊ぶ場所だ」

 中にはビリヤードやダーツ、スロットやルーレットまであった。

 既に人の出入りもある。

「一般車両の人達は入っちゃダメなの?」

「いや、ダメじゃねーけど」

 一瞬冷たい視線を感じた。

「まあ、よくある理由としては、貴族は庶民と遊びたくないし、庶民は貴族と遊びたく無いんだよ。あと、一般車両の人達は入りづらい環境だしな」

 ルカは耳元で話した。

「なんだそうなんだ~もっと仲良くすりゃいいのに」

「まあ、そうもいかないんだよ。ニア次行こうか」

「うん」

 ルカ達は更に前へ進んだ。


「ここが食堂車だ」

「ここも、お金持ち専門なの?」

「まあな」

 二人は食堂車にいた。

 まだ、食事時ではなかった為、人はいなかった。

 いかにもお金持ちの人が食べるような、ドレスコードがある、高級そうな雰囲気を漂わせていた。

「それだけの額を払っているから、俺は金持ちに文句は言えないよ」

「まあ、そうか」

「それに一般にも解放しているしな」

「そうなんだ~」

 と、ニアがメニューを見た。

 見た事も食べた事もない、高級な食材を使った料理名が書いてある。

 そして、金額もゼロが一つ多かった。

「ねえ、これ」

「ああ、高いだろう。まあ、これだから、手がつけられず、お弁当を用意したり、売店があったり、簡易キッチンみたいなのもあるから、そこで軽く料理して、食べたりするんだよ。所でニアはどうする? 食べたいなら奢るけどここで食べる?」

「いや、作るよ」

 ニアは元気なく言った。

「いいの!」

 ルカは逆に喜んでいる。

「だって何か場違いな所だし、これ以上ルカに迷惑かけたくないし……」

「俺は迷惑だなんて思ってないけど?」

「だって桁違うのよ。いくら何でも」

「ああ、金なら大丈夫だよ。じーちゃんの名前出してツケて貰えばいいし」

(そうか、ルカって筋金入りのお坊ちゃんだったのよね)

 メフィストは、実際かなり儲かっていると話を聞いている。

 ツケる程の財があるのだから、大したお金持ちのようだ。

 普通に話していたり、食べたりして、金持ちの素振りを見せないから、ニアは考えた事無かった。

「まあ、俺はニアの飯の方がいいな~」

「なんで?」

「こー言うのって、ガキの頃から食べてたし、それに俺、いわゆる家庭料理とか、安くて美味い飯とかの方が大好きだし、ツインにしたのだって、ある程度不自由な方が、旅は面白いだろう?」

(なんつーか)

 ニアは苦笑いをしていた。

「俺がじーちゃんの所から離れた理由もそんな所だよ。あのまま何も知らないで一生を生きるのは嫌だったからな」

(意外と普通の生き方を望んでいるのね)

「私の料理でいいなら作るよ」

「んじゃあ、それで決定だな」

 ルカは微笑んでいた。

「うん、分かった。ルカ次、行きましょう」

「ああ」

 ニアを先頭に次の部屋に向かった。


 一部屋がとても豪華な部屋が、並ぶ車両についた。

「ここがスイートルームのある車両だ」

「へー」

 真っ赤な絨毯が敷かれ、照明はキレイなシャンデリアとなっていた。

「空きがあれば、中が見えるけど」

 ルカは空き部屋を探した。

「空いてなさそうだね」

「そうだな」

 二車両、スイートルームで占拠しているが、何処も埋まり、扉がしまっていた。

「まあ、仕方ないわね。次行きましょう」

「次は運転席だけどいいか?」

「ええ、いいわ」

「んじゃあ、行くか」

 ルカとニアは更に前に進んだ。


 ルカは目を輝かせ、列車を運転する姿を見ていた。

「凄いな~」

「ねえ、分かるの?」

「ああ、なんとなくだがな」

「へー」

 ニアにはなんがなんだか分からなかった。

「運転してみたいな~」

 隣でルカと一緒に、目を輝かせている男の子がいた。

 一見すると戦士の格好だ。

 腰に高そうなロングソードを下げ、白くてしっかりとしたアーマーを纏っている。

 まだ、あどけない顔をしていて、年はニアより下の十代後半だろう。

 金髪の髪に青い瞳、高貴な雰囲気を感じられた。

「ああ、俺もだ」

 ルカも同意見のようだ。

「気が合いますね」

 二人が顔を合わせた。

「お前は!」

「あなたは!」

 ルカと男の子は知り合いだった。

 二人は大声を上げていたが、ニアにはなんだか分からなかった。

「なんなの?」

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