僕の熱中出来るもの

高崎 猿田助

第1話


 朝7時、登校の時間。僕にとっては、1番罪悪感と安堵感が入り浸る時間だ。


「奈津、あんた今日学校いくの?」

 母の声が下から聞こえてくる。


 学校……か、行きたくない。ダルい。ダルい……。


 けど、行かないと……。あ、宿題やってないし、こんまま行くと、多分先生に怒られる。


 「い、行かない」

 怯えた声で答える。

 「そ、」


 どこか心配している声が響く。この声を聞く度にとても申し訳なくなる。ただ、惰性で生返事をしているのに、ここまで心配させてしまっていることを。そして、たかが1日学校を休めることに安堵している自分がいることを。


いつも登校するはずの時間をベットの上で布団にくるまりながら、やり過ごす。それがここ一週間の僕の日課になっていた。


 今から、登校すれば、間に合うか? いや、登校して、そして……、そして……。どうするんだ。また、あの役に立たないような勉強をこの先続けていくのか? だからって、このままずっと、この部屋にこもり続けるのか? 


 考えれば、考えるほど、不安になっていく。


 学校行かないととどうなるのかな? 高校に行けなくなるのかな? で、そのまんま就職? けど、中卒じゃどこも雇ってくれないて先生が言ってたし、じゃあ……、ニート? このまま、ずっと引きこもり? けど、学校に行くのも行くので……。


そんな、堂々巡りの自問自答ともに、今日も誹簿 奈津は布団の中で強迫感に追われていた。

  

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る