V.D.G-夢幻の花-

リアび太

第1話 出会い


むかしむかしのこと、ボクが生まれてすぐに

大雨とか大地震、シンギュラリティっていう

ロボットたちのおおあばれとかあったらしいけど、

みんなで力をあわせて乗りこえたんだって。


だけど、お兄ちゃんたちはいつも言ってるんだ…

「人類はこれから更なる試練を与えられるだろう」

って…

これから先どんなことが待っているのか…

それはだれにもわからない。

もちろん、ボクもお兄ちゃんたちも…


今は西暦2049年…。

ボクたちのお話のはじまりはじまり…


ここは日本、その中でもかなりまんなかに

あるであろう静岡県の伊豆北条市。

そこでボクたち、家族3人はすんでいます。

ウチにも前はもっと人がいたんだけど、

今はもういない…。

おとうさんもおかあさんもボクが生まれて

すぐに死んじゃったらしい…。

ともだちといっしょにいるとき、なんでボクには

おとうさんおかあさんがいないんだろうって

思っちゃうことだってある。

…でも、もういつかみたいに

それで泣いたりはしないんだ。

ボクが泣いてばかりだと

大好きなお兄ちゃんたちが心配するからね!


…って、んん?

なんだかまっくらなところに来ちゃったなぁ…

あれ?だれか、遠くのほうにいる?たくさん…

「…らと!…のち…!」

「…いった…なの…!」

「…クと…も!」

「…ミナサン…ラ…!」

「…生きと…もの、全て…!」

だれか…いっぱいの人がさけんでる?

なんだか近くにも遠くにも感じるな…

と思ったとたん!目の前が真ん中から光り出して、

そのヒカリがどんどん周りに広がっていくんだ!

「…ぁぁぁ…」

そのヒカリが一番キラキラしたときには、とっても

すごい悲鳴?みたいなのがして耳がいたかった。

と思ったら、そのあとはビックリするくらい

静かになったんだ…。


と、そこでボクはベッドからカラダを起こした。

…あぁそうか、さっきまでのは

ユメだったんだなってわかったんだ。

一体なんだったんだろ?

なんだかすごくカラダが熱くて汗ビッショリだ。

ねぼけまなこで部屋のなかのもうひとつのベッドを

見ると、もぬけのからだった。

もうお兄ちゃんたちは起きてるみたい。

2人ともいつも早起きだ。

外はもう明るくなってる。静かではあるけど、

わんちゃんとおさんぽする人なんかが

いるから夜よりはにぎやかなんだ。


ボクはベッドからおきだして

かいだんを下りて1かいのリビングにむかう。

「おはよ~。」

「おはよう、トモヤ。」

トースターに食パンをセットしていた

リュウヤおにいちゃんが笑いかけてくれる。

「トモヤ、おはよう。最近は毎日早起きだな、

 よくやってる。」

広げられた新聞紙の向こうから

声とともに顔を見せたのは、

ジンヤおにいちゃんだ。

「えへへ~、ボクだってもう

 10才になったんだからね!」

2人のおにいちゃんはとってもやさしくって、

ボクにとってはとっても大切で大好きな

おにいちゃんたちだ。

ちょうど朝ご飯を用意してくれていたところで、

ボクはそれを受け取り、一度ぶつだんの前へ

と運んで、おそなえをする。

これは毎日やってることなんだ。


そうしてボクたちはいっしょに朝ご飯を食べる。

平日のお昼はボクとリュウにいちゃんは学校で、

ジンにいちゃんはお仕事、

夜はリュウにいちゃんのアルバイト、

ジンにいちゃんのお仕事が遅くなるときが

あるからいつもいっしょにとはかぎらない。

だから、朝ご飯は一家だんらんの大切なときだ。

れんらくしておいたほうがいいことのほかは、

ボクやリュウ兄ちゃんの学校や友達のこととか、

ジン兄ちゃんのお仕事や

いっしょにはたらいている人のこととか

(決まり事であんまり話してはいけないんだって!)

毎日のできごとをお話しする。


今日はこんな感じ!

「仕事にはもう慣れたの?」

「さすがに異動してもう1年だ…経験は踏めては

 いるが、上手くできているかどうか…」

「機器情報管理課だったっけ、

 ロボット嫌いな兄さんには辛くはないの?」

「確かに俺の性分には合わないな…

 だが乞われる以上はやり遂げる所存だ。」

「ジン兄ちゃん、

 昨日もおそいみたいだったけど大丈夫?」

「トモヤ、ありがとうな。だが、俺は大丈夫だ。

 ホンドウ家の長子たるもの、

 弟たちを養えるような強い男たれ、だ。」

「兄さん、負担をかけてしまって申し訳ない。」

「リュウヤはアルバイト、トモヤは家事をして

 助けてくれているからな。

 俺の負担はずっと少なくて助かっているんだ、

 問題はないさ。」

そう言ってまんぞくしたような顔で

ジン兄ちゃんはコーヒーを飲んでる。

「粋な男は漆黒な闇のごときブラックを嗜む」って

言って、毎朝と、たまに夜も飲んでる。

あんなにがいものを飲めるなんて

大人ってすごいんだな、と思う。


今は慶永元年…科学やきかいは

前の令和って時代からすごく進歩したらしい。

今はアシスタントパートナーっていうかていよう

ロボットとか、空をとぶ車もよく見かけるし、

昔の人が見たらビックリするだろうなぁ。

だけどジン兄ちゃんはロボットが嫌いみたいで、

ウチにはレイゾウコとかセンタクキとかしか

きかいが置いてないから、

TVや新聞でしか見たことはないんだけどね。


「ごちそうさまでした~」

ボクは食べ終わった食器を流しまで持って行って

置いてから、シャワーを浴びて着替えるために

2かいに戻ろうとかいだんをのぼろうとした。

…あ、昨日カズヤがかしてくれた本を

テーブルにおきっぱなしだった!

リビングに戻ろうとしたら、

お兄ちゃんたちの話し声が聞こえてきた。

「アイツは…元気なんだろうが…

 たまには声を聞きたいものだ…」

「兄さん、心配しないで…

 この前も会ったけど生き生きとしていたよ、

 アイツは」

「まぁそうだろうな…ところでお前も

 アルバイトで忙しいようだが、

 どうだ?具合は。」

ボクはクルッと回って、かいだんをのぼって

お部屋にもどった。お兄ちゃんたちが

話していたのはたぶんボクに聞かれたく

ないことかな?って思ったからだ。

それに意外と登校時間までもうすぐだ。

いそいで支度をしなきゃ!


学校は楽しい。友達とも遊べるし、

おべんきょうもおもしろいし、

給食もおいしく食べられるし、

いつだってワクワクするなにかに出会える。

だから通学路の登下校だって

楽しくってしかたがない。

今も同じ登校班のカズヤと

ワイワイとおしゃべりしながら歩いてる。


あ、あそこ、ケイコちゃんが歩いてる!

「ケイコちゃん、おはよー!」

「おー、ふるしんぶん、おはよ!」

「誰が大衆情報紙の古紙版か。

 おはよう、トモヤくん、カズヤ。」

いつもどおりそっけない感じで、

でもちゃんとあいさつしてくれたのは

ケイコ・コイケちゃんだ。小柄で、

ショートカットに赤いメガネがかわいらしい。

「なんだよー、シンブンシもコイケイコも

 逆さに読んでもいっしょだろ?」

「変なあだ名は止めろと言ってるでしょ?

 そんながさつだとシズカにも嫌われるよ?

 アタシも相手しなくなるからね?」

2人はいつもこんなやりとりをしている。

シズカちゃんも同じく4年生の子なんだ。

今日はケイコちゃんに朝から会えるなんて、

とってもいい日だな!

それに…今日は風やおひさまがやわらかくて、

ボクがもっとちっちゃかった時の

おかあさんのにおいをなんとなく

思い出せるような気がするんだ。

…まぁ、10才ちょうどくらいしか生きてない

ヒトの勝手なイメージかもしれないけどね。

でもね、さびしい思いだったらケイコちゃんの

ほうがよっぽどしているはずなんだ。

ケイコちゃんにはおとうさんおかあさんは

いるんだけど、ずっと外国でお仕事をしてる。

だからケイコちゃんはいつも家にひとりだし、

今はカナタくんだっていないし…。

あ、カナタくんっていうのはカナタ・タナカって

いう名前で、やっぱり同級生の男の子だよ。

1年生の時からケイコちゃんとカナタくんは

シンブンシコンビとかかいぶんペアなんて

呼ばれていて、ボクもとってもなかよしだった

けど、ある日とつぜん、

カナタくんはどこかへいなくなってしまったんだ…

ボクもいつか帰ってくるとは思ってるし、

ケイコちゃんは今でもずっと探し続けてる。

そんなケイコちゃんのこと、

せめてボクが元気づけてあげなきゃね!


そんなことをなんとなく考えていたとき。

…?

ふと頭の中に朝見たユメみたいに

声が聞こえてきた気がして立ち止まった。

(…………イ。)

「気のせいかな?」

そのまま足を進めようとする。でも…

(…カ。…ノ…ヲシマス)

なんだかロボットの音声みたいなのはさっきより、

さらにくっきり頭の中に聞こえてくる。

気のせいじゃない!誰か助けを求めてるの?

「どうしたの?」

カズヤが声をかけてくれた。

ケイコちゃんもボクを見つめてる。

心配をかけちゃったみたいだ。

「ごめんね、忘れ物!ちょっと先に行ってて。」

あやまりながら列を離れ、

こえ?が聞こえた方に走る。

ちょっと前に通ったばかりの曲がり角まで戻って

左に曲がる、その先はうら通りだ。

あったかい日差しは

少しずつ日かげへと変わっていく。

ちょっと暗いな…

「ねぇ!だれかいるのー?」

まわりに聞こえるよう声をかけてみたけど

…お返事はないみたい。

引き返そうかな、どうしようかな、

と迷ったその時…

あれ、なんだか弱く何か光った?

ボクはその方向にゆっくりと進んでいく。

…何だろ?あたりに捨てられてるゴミをかき分けて

ボクはヒカリに手をのばす。

かすかなヒカリとネツを出しているモノは

どうやらお人形さんみたいだった。

ようせいさんみたいなかわいらしい

カッコとは逆に、ヒドくボロボロだ。

かわいそうに…手当てしたほうがいいかな?

でもお人形さんだもんね?必要ないか。

そんなふうに思ったその時…

「ボディノシュウフクヲキボウシマス…」

よわよわしい女の子のロボット?の声が、

ハッキリと耳に届いたんだ。


これがボクと戦闘用ドール(V・D)である

この子との最初の出会いだった…

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