禁煙のコツ(第二話 オカシな禁煙法 原作小説)
「よし、これで完成したはずだ。」
博士はようやく研究していた装置を完成させた。
その装置は腕時計型のもので、表には小さなスピーカーがついている。
「期間は一ヶ月にしよう。と、つける前に最後に一本だけ…」
博士は箱からタバコを取り出し完成記念に禁煙前最後の一本を吸った。
「さて、これから禁煙生活開始だ。今度こそうまくいくといいのだが。」
博士が腕時計型の装置を腕に巻くと、カチッとロックの音がした。
一度つけると1か月後まで外れないと言う仕組みだ。
この装置は、意思の弱い博士が禁煙を成功させるために自ら製作したものだ。
禁煙の意思に反して吸ってしまうとアラーム音で警告が鳴り、
それでも吸い続けると腕に電気ショックが流れるように設計したのだ。
前回は自分の意思だけで挑み結局失敗してしまったので、
今回は機械の力に頼ることにした博士だったが、
早速その日の晩になると我慢できずにタバコの箱に手を伸ばしてしまった。
「これは動作確認の意味で吸うんだ。そうだ、そう思おう。」
自分に言い訳しながらタバコに火をつけたがいくら吸ってもアラームはならない。
「おかしいな、故障してしまったか。参ったぞ。
ロックもかかっているから向こう1か月は外せないし、とんだ失敗作を作ってしまった。」
そう言いながらその日はもう寝てしまった博士だったが、朝方にアラームの音で目を覚ました。
「何だ…?こんな時間に目覚ましをかけてないはずだが。」
確かに目覚まし時計の音では無い。音の出所は自分の腕時計だったのだ。
「なんだこれは。ひとりでに鳴り出すなんて。」
しばらく待てば鳴り止むだろうと待ってみたが一向に鳴り止まない。
イライラして博士は思わずタバコを吸った。
すると、アラームがピタリと病んだ。
同じような現象はその後も続き、博士がタバコを吸うたびに装置は止まった。
装置はタバコの煙を感知するとアラームが止まる設計になってしまっていたのだ。
「大変だ。タバコを辞めるための装置を作ったはずがタバコを吸わせる装置を作ってしまった。」
そうして1か月、博士は気まぐれな装置に命令されるがまま、
寝ている最中だろうとシャワーの途中だろうと食事中だろうと、タバコを吸わされ続けた。
「もう勘弁してくれ…自分の好きな時に吸えないんじゃただの苦行だ…ゲホッゲホ」
ある時は待っていればアラームが鳴り止まないかと思い待ち続けたみたが、少しするとアラームに加え電流も流れ始めたので慌てて吸った。
そしてとうとう1カ月が経ち、カチッという音と共に装置が外れると博士は喜びの声をあげた。
「やったぞ。とうとう解放された。もうこんなもの見たくも無い。」
そう言うと、博士は装置と共に家にあったタバコをすっかり捨ててしまった。
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こちらはYouTubeにて公開中の、ショートショートWebアニメ「ひとくちキネマ」第二話の「オカシな禁煙法」の原作小説になります。
作品は以下よりご覧いただけます。
https://www.youtube.com/watch?v=dlzMJQiQQvw
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