誰かの衝動
男は悩みを抱えていた。
いつからか自分の意思とは関係なく体が勝手に動くようになってしまったのだ。
最初の方は家の中をうろついたり、
目の前の物を手にとったりなど症状は軽微な方だったが、
あるときからついに外でも症状が出るようになった。
時には勝手に体が走り出したり、飛び跳ねてしまったりするようになりその度に街中で注目を浴び恥ずかしい思いをした。
困った男は症状が出ないタイミングを見計って病院に通った。
主治医が言うには
「脳の神経に問題があるのかもしれません。
誤った電気信号が脳から筋肉に送られることで、
自分の意思とは関係なく体が動いてしまうのです。
とにかく治療法が確立されてないうちは、
脳にストレスのかからない規則正しい生活と仕事選びを…」とのこと。
男は主治医に言われた通りの生活を送り続けたが症状は悪化する一方だった。
ついにある日、男の症状は悪化し街中で見ず知らずの他人に暴力を振るってしまうようにまでなった。
怒り狂った見ず知らずの他人に追いかけ回されながら、男の心は罪悪感と悪化の一路を辿る病状への恐怖でいっぱいだった。
「僕の病気はいったいどこまで悪くなってしまうんだろう、
ひょっとしたらそのうち自分の意思とは裏腹に人のことを殴ったり、
もしかすると殺し、あ。あ。あ。」
絶望感に押しつぶされた男はそこで動かなくなってしまった。
顔からは生気が消え失せ、その場で崩れ落ちるように座り込んでしまった。
まるで魂が抜けたように、そこから一歩も動かなくなりそのまま━━━━
テレビ画面の中で動かなくなってしまったキャラクターを前に
コントローラーを持っていた男の子は憤る。
「ちょっと!せっかくいいところまで進んでたのに!
お母さん!ぼくのゲーム壊れちゃった!」
「まぁ、最近遊びすぎだったからかしら。
これに懲りてゲームの時間は減らすことね。ささ、宿題しなさい。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます