とある手紙

@hutsunohito

第1話

『はじめまして。初めてお手紙を書かせて頂きます。』


ふと思いつき、初めてファンレターというものを書いてみる。届け先は、最近知ったアイドル。


『友達をきっかけに and を知りました。調べれば調べるほど、佐藤さんの笑顔や元気さに惹かれました。』


最近デビューしたらしい、アイドルグループ【and】。下積み時代が長い、苦労したアイドル。その中の佐藤さんに目が釘付けになった。いつも笑顔でニコニコ。グループのムードメーカー。調べれば調べるほど、自分に似ている気がした。


『佐藤さんに私の本音を聞いて欲しく、手紙を書きました。』


しかし、佐藤さんは、自分の好きなことや仕事に誇りを持ち、キラキラ輝き、好きだと叫ぶ。そんな佐藤さんは私と真逆に感じた。似ているが真逆、そんな人だから聞いてくれる気がした。


『私は普通と言われる生活を送っています。好きな仕事。好きな人たち。家族。幸せだと思っています。けど、なんで笑っているのか。なんで働いているのか。わからなくなります。』


誰にも言えない自分の気持ちをただただ手紙に託してみる。なんとなく、なんとなく佐藤さんなら聞いてくれる気がして。


『佐藤さんの笑顔、元気さにいつもパワーをもらっています。けど、自分をゆっくりさせてあげる時間も作ってあげて下さね。佐藤さんが好きなことを好きな人たちと楽しめることを応援しています。』


最後に名前と住所を書いて、封をした。

切手がいくらいるかわからず、80円切手と50円切手を貼り付ける。


思い立って書いたファンレターとは言えない一方的な手紙。少し送ることに戸惑ったが、せっかくなのでポストに入れてみた。

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