僕たちの記憶

@yeonjun09nami

第1話

『私のこと、忘れないで、あの日一緒に………』

はっ…!また、あの夢だ。僕は最近おかしな夢を見る。夢の中で星空を眺めていると、どこからか声がする。その声はいつも大事な何かを言いかけて終わってしまう。夢から覚めると、何かを思い出さなきゃいけない気になるのに、それが何か思い出すのがひどく怖い。


―僕達は、もっと早く思い出さなきゃいけなかったんだ。あの日の記憶を…。



「なぁ!今日学校で肝試ししようぜ!」

タクミが下校中の電車の中で言い放った。

「えぇ!肝試し!?嫌だよ僕は行かないよ!」

「あれか、ダンス部の練習室に幽霊がいるって噂か?」

怖がりなリンを煽るかのようにアヤトが言う。

「僕は行きたいな!夜の学校って何だか楽しそう…!」

「レオン!お前ならそう言うと思ったぜ!で、お前はどうする?」

タクミに聞かれ僕は答える

「みんなが行くならいくよ。」

「じゃあ決定!今日10時に学校の裏門に集合な!」



「ダンス部の練習室ってどこだっけ?」

「東棟の1階の端っこだった気がする。」

僕達は約束通り10時、ダンス部の練習室に向かった。

ダンス部の練習室に着くと、タクミがおもむろにドアをあけ、電気をつけた。

練習室は校庭側の壁が鏡になっており、自分たちの姿が鏡に映った。

「やっぱりなんもねーなー。」

「まぁ、幽霊なんていないよ。鏡に映った自分見て幽霊だと思ったんじゃないの?」

次の瞬間。

ドンッ!ガタガタガタ-バチッバチッバチッ

大きな振動とともに、練習室の電気が点滅し出す。ウゥーーーーン。警報も鳴り出し、僕は怖くなり練習室から出ようとした。

バンッ!目の前が真っ暗になる。そして僕の前に白い扉が現れた。当たりを見回してもみんないない。

「いったいなんなんだよ。」そう言いつつ、僕は扉を開けた。



扉を開けた先には、駅のホームで爆発事故に巻き込まれ、血まみれで意識を失った自分がいた。

「なんなんだよ…これ。」

ホームの電気掲示板には明日の日付。ちょうどいつもの下校の時間。いつも乗る、電車。まるで自分の未来を見ているようだ。


『覚えていて、私たちが見たあの星空を。忘れないで、私の名前を…。』

夢で聞く声だ…!覚えていてって一体何を!?いったい何がどうなって-

バッ-

また辺りが真っ暗になる。つぎの瞬間、目の前に星空と幼い頃の、タクミ、アヤト、リク、レオンの4人がいた。

「俺たち6人はずっと一緒だ!」

幼いタクミが笑顔で言う。続けてみんな「もちろんだ」と返事をする。

「6人?5人しかいないじゃないか。」

僕はタクミに聞く。確かにそこには、僕を含め5人しかいないのに。タクミはいったい誰を見ているんだ?


『私のこと、忘れちゃったの?なら、思い出して。私たちの-』


パッ!目の前が真っ白になる。

目を開けた瞬間、僕は練習室にいた。



目を開けると、僕は練習室にいた。タクミ達も驚いていた。

「ねぇ、俺、さっき、明日電車に乗ってて爆発事故にあって、し、死ぬ夢を、見た。」

リンが口を開いて、涙声で言った。

「リンも見たのか!?」

「俺も見た……。」

タクミとレオンも同じ夢を見たらしい。

「みんな、同じ夢を見たらしいな…。」

アヤトもどうやら同じ夢を見たらしく、いつも冷静な彼でさえ動揺を隠せずにいた。

「爆発事故の後、変な声が聞こえなかった?私のこと忘れちゃったのかって。あとみんなで星空を見てたんだ。」

僕は夢の続きをみんなに確認した。

「いや、俺はそんなの聞いてないし見てない。」

「俺も。」

「僕もだよ。」

「俺たちは事故の場面しか見てないけど。」

どういうことだ。なんで、僕だけ違う夢を見たんだ。

「とにかく、今はここから出よう。それからみんな、明日は電車を使わないようにしよう。何かあったらいけないから……。」

急いで僕たちは学校から出て、各自帰宅した。

次の日、僕達は学校で昨日の出来事を話し合った。

「みんなの話をまとめると、今日の午後4時32分、3番ホームの○○駅行きの電車に乗った俺たちは、ホーム内で何らかの原因で怒った爆発に巻き込まれて、死んだ。って言うことでいいか?」

アヤトが話をノートにまとめて、読み上げる。あまりのリアルさに、僕達は声も出なかった。

「あとは、お前の夢だけが謎だ。」

「そうだ、なんなんだ変な声って?」

僕は昨日見た夢の続きと、最近よく見る夢もついでに話した。

「俺たちの他には誰も居ないんでしょ?なら、一体誰が言ってるんだろう。やっぱ、ゆうれ…」

「やめてよ!怖い話にしないでってば!」

「冗談だって。そんなにビビんなって。」

僕の話でリンを怖がらせてしまったと思うと申し訳なくなってきた。

「ねぇ、その声って、お星様じゃないかなっ?」

「は?」

みんなレオンのふざけた発言に、固まる。レオンは優しい反面、ロマンチストな一面もある。そんなこと昔から知ってはいるが、こんな時にまで。

「だってほら、何度も星空って言ってたんでしょ?なら僕達は星を見て、喋った。つまり、お星様と話してたのさ!」

「そんなバカげたことがあるか!?」

タクミはレオンの能天気さに腹が立ったのか、声を荒らげていった。

「いや、でもレオンの言うことには一理あると思う。僕が忘れた誰かが星だとしたら。」

僕は何を言ってるんだ。なんで忘れた誰かが星じゃないといけない?自問するが、何も答えは出てこない。

「だとしたら、こいつだけじゃないかも。俺達も星に関する何かを忘れてんのかもな。」

「僕達が幼い頃、一生に星空を見た子…。」

「急にどうした?」

「いなかったけ、昔一緒の幼稚園に確か、セイって子。たしか、体が弱くてあんまり幼稚園には来てなかったけど。」

「あぁ、そんな子確かにいたな。」


キーンコーンカーンコーン

予鈴がなる。

「やべっ、次移動教室じゃん!この話はまた明日!」



速報です。今日、4時32分○○駅のホームで爆発事故が発生しました。乗客乗員数名が死傷したとのことです。この事故により-。


唖然とした。家に帰ってテレビをつけた瞬間このニュースだ。あの夢と全く同じ光景が映し出されていた。

セイ、確かにそんな子いたようないなかったような。記憶が曖昧として、上手く思い出せずにいた。なにか手がかりはないか、幼稚園のアルバムを見返した。

「この子、誰だ…?」

そこには、僕達5人と一緒にならんで写真に映る女の子がいた。この子がセイナなのか?いまいちピンと来ない。

「なーに見てんの?」

「う、うわっ!母さん!ノックくらいしろよ!」

「したわよ、でも気づかないんだもん。で、何見てたの?」

「幼稚園のアルバムだよ。」

「あら〜!懐かしいわね。この頃はまだ、セイちゃんも元気だったわよね。」

「え、セイちゃん?」

「覚えてないの?この子よ、あんた達と写ってるこの女の子。可哀想よね。こんなに小さいのに病気で死んじゃうなんて。」

「病気…。セイちゃん…。思い出した…。」

「あらいけない、今日特売の日だったわ!

じゃあお母さんちょっと買い物行ってくるわ!」


バタン-.

「全部、全部思い出した…。なんで、忘れてたんだ。ごめん、セイちゃん…。」


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