だから俺は青春を諦めた
柊 季楽
第1話 だから俺は青春を諦めた
『哺乳類は基本、コミュニケーションを必要とする。
ある実験で、猿を孤立した部屋の中にいさせたところ、
一週間もたたぬうちにストレスで体の毛が抜けだしたという。
人間にとってもそれは例外ではない。誰でも何か話したい人ぐらい必要なのである。
しかしながら、私は、人付き合いがとても不得手だ。
こちらから話しかけても、最初に名前を聞かれ、せいぜい少し聞いてやるよぐらいに
しか思われないのである。
話は変わるが、中高一貫校生活を生きる上で、学校では、グループや派閥のようなものが形成される。そのグループの中にいる要領のいい人たちは、世間一般的には陽キャ。
私のような要領の悪い人付き合いの苦手な者たちは、陰キャと呼ばれる。
陽キャの人たちは、学校というものをコミュニケーションを学ぶ場、もしくは
青春を謳歌する場所としか思っていない。『勉強は別に家でもできる』と。
例外はたくさんあるだろうし、確かに彼らの言い分もわかる。反論する余地もない良
い考えだと思う。
ただしそれは、彼らにしかできないことである。
私が彼らのように気軽に話しかければ、「調子に乗るなよ」と拒絶される。
私が彼らのように流行に乗れば、「気持ち悪い」とあざ笑う。
これでどうして、「青春を楽しもう」なんて気持ちになるだろうか。
彼らはもはや私たちを差別しているのである。
だがしかし、この状況を変えることは難しいし、そうしたいとも思わない。
これから始まる高校生活が、せめてこの身にさらなる禍をもたらさないように祈るば
かりである。
とまあ、こんな風に、私は青春を諦めた。』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます