だから俺は青春を諦めた

柊 季楽

第1話 だから俺は青春を諦めた


『哺乳類は基本、コミュニケーションを必要とする。


ある実験で、猿を孤立した部屋の中にいさせたところ、


一週間もたたぬうちにストレスで体の毛が抜けだしたという。


人間にとってもそれは例外ではない。誰でも何か話したい人ぐらい必要なのである。


しかしながら、私は、人付き合いがとても不得手だ。


こちらから話しかけても、最初に名前を聞かれ、せいぜい少し聞いてやるよぐらいに


しか思われないのである。


 話は変わるが、中高一貫校生活を生きる上で、学校では、グループや派閥のようなものが形成される。そのグループの中にいる要領のいい人たちは、世間一般的には陽キャ。


私のような要領の悪い人付き合いの苦手な者たちは、陰キャと呼ばれる。


陽キャの人たちは、学校というものをコミュニケーションを学ぶ場、もしくは


としか思っていない。『勉強は別に家でもできる』と。


例外はたくさんあるだろうし、確かに彼らの言い分もわかる。反論する余地もない良


い考えだと思う。


ただしそれは、彼らにしかできないことである。


私が彼らのように気軽に話しかければ、「調子に乗るなよ」と拒絶される。


私が彼らのように流行に乗れば、「気持ち悪い」とあざ笑う。


これでどうして、「青春を楽しもう」なんて気持ちになるだろうか。


彼らはもはや私たちを差別しているのである。


だがしかし、この状況を変えることは難しいし、そうしたいとも思わない。


これから始まる高校生活が、せめてこの身にさらなる禍をもたらさないように祈るば


かりである。


とまあ、こんな風に、私は青春を諦めた。』

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