第5話 最後の大会

 その日は、痛いくらいに日差しが強くて、熱い、熱い夏の日だった。私たちの最後の大会は、去年までと同じくあと一歩というところで甲子園まで届かず、地方の決勝戦で敗退となった。


 クールな後輩も生真面目な後輩も、大輝といつも一緒にいる同級生も、もちろん大輝も、この日ばかりは顔も隠さずに、ボロボロ涙を流していた。


 これで、終わったんだ。終わっちゃったんだ。


 みんな最後まであきらめてなくて最後の最後まで逆転を信じていたけれど、最後はなんだかあっけなく終わってしまった。だから、なんとなくまだ信じられない。これで、もう「引退」なんだって。


 それでも、対戦校の校歌を聞きながら涙を流すみんなの姿を見ていると、なんだか熱いものがこみ上げてきて、ほんの少しだけ涙ぐむ。


 他の子たちが遊んだりしてる時間に毎日毎日、グラウンドで泥だらけになって、何でこんなことしてるんだろうって思ったけど、ようやくその理由が分かった気がした。


 ううん、本当は......、ずっと前から分かってたのかもしれない。もしも夢が叶わなかったとしても、何かに夢中になることは無駄なことなんかじゃないって。


 だって、試合に出てなかった私も、いま、こんなにも胸が苦しい。みんなが、自分が、どれだけひとつのことに打ち込んでいたのかを知ってるから。


 絶対に、無駄なんかじゃなかった。


 後片付けが終わってから、キャプテンの大輝と一緒に、千羽鶴を対戦校に渡しにいく。

 みんなで一緒に作った千羽鶴。今まで対戦してきた相手から受け渡され千羽以上になったものを、向こうのキャプテンに託す。

 私たちは甲子園に行けないけど、この鶴たちと一緒に、思いだけは連れていってもらえる。


 試合が終わった直後はあれだけ号泣してたのに、対戦校のキャプテンと笑顔で握手をかわす大輝の横顔には、少しも後悔なんかなかった。

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