第05話】-(雨宿り。そしてエテルの正体
〈主な登場人物〉
紬/イトア・女性〉この物語の主人公
フルミネ〉人食らいになってしまった少女
ギルメン〉トゥエル、エテル、ユラ、フルーヴ
──────────
(紬/イトア視点)
日もすっかり
持ってきていた荷物から簡易のテントを張り、雨を
私たちは火を囲み気まずい雰囲気だけが漂う。雨音と火が焦げる音だけが喋り続ける。私はさっきのエテルの行動に動揺し、また
「エテル様、ロイ家の人間だったのですわね」
火に照らされ顔を
「うん……」
「あの、ロイ家って……⁉」
「この国の王族しか持てない姓のことよ」
話の内容を理解できなかった私は、トゥエルからの一言に
「え⁉ じゃあ、エテルって王子様なんですか⁉」
「いやいや、そんな
「え……」
「そんな事情がおありだったのですわね」
私はこの突然の告白に絶句してしまった。
そして以前中庭でエテルと会話した内容を思い出していた。「座っているよりも動いていたほうがいい」と言っていたことを。これはそういう意味だったんだ。あの時は分からなかったけれどこれで
ユラはさっき仕留められなかったことにまだ苛立っていた。私達とは少し離れ、火の光が届く近くの木に背中を預け腕を組む。会話には入ってこなかった。フルーヴは、いつものことだけれど、ただ黙って聞いていた。
─────
そしてエテルはフルミネとの出会いについてポツリポツリと話始めた。
「フルミネと出会ったのは僕が十歳の時だよ。その時、城の者と狩りに来ていた僕は森に迷い込んでしまってね。そこで出会ったんだよ」
エテルは焚き火に
「僕たちは友達になって、しばらく近くの村で滞在していた僕はその森に通うようになった。フルミネは僕に色んな魔法を見せてくれたよ。とても魅せられたよ。でもそれが家の者にばれてしまってそれからここには足を運んでいない」
そして、と
「元から人と魔女は関わりを持つことを禁止されている。森の番人として生を
エテルの顔色が変わる。
「魔女ですって⁉ ということは……」
「そう、
「
私はまた置いてきぼりになってしまった。それまで無言を
「負の力に負けて……取り込まれ……中には魔獣化する者……もいる」
「ほとんどの場合、何か引き
「あの姿……一体何があったというんだっ⁉」
顔半分を手で隠し顔をぐしゃぐしゃにするエテル。
「エテルに仕留められるのか?」
それまで黙っていたユラが冷たく突き放す。
「…………」
エテルは
「そんな甘いことではこちらが死んでしまいますわよ」
トゥエルがさらに追い打ちをかけた。
ユラとトゥエルの言葉は正しい。私たちは彼女を
「分かっている。次こそは……これは僕がケリをつけてあげたい。そして終わりの時も」
エテルは
―――――
その後、私たちは二人が火の番を。残りの三人がテントで休むことになり時間制で交代することにした。まずはエテルとフルーヴが火の番。私とトゥエル、ユラが仮眠させてもらえるようになった。
簡易のテントは一応開け閉めできる入り口はあったものの、足をやっと延ばせられる程の幅で。三人となるとぎゅうぎゅうになるくらいの小さなテントだった。テントに入るや
「じゃあ、私はここな」
トゥエルが何か言いたそうにしているのを
「当たり前だ。お前男だろうが」
トゥエルに指をさしユラが不審な視線を向ける。それを聞いたトゥエルが反論する。
「失礼な。こんなところで襲うような
このやり取りに私は空笑いを浮かべる。私たちは川の字になって身体を休める。程なくしてユラの寝息が聞こえてきた。この状況下でもすぐに眠ることが出来るユラに私は
私はというと、ユラから背を向ける体制でフルミネさんとの戦闘について思い出していた。目を
なんて残酷な事なんだろう、と。それでもエテルは自分の手で
「エテル様の事を考えてますの?」
背中越しからトゥエルが私を思考から呼び覚ます。
「……うん」
「まだ迷いはあるみたいですけど、彼ならきっと覚悟を決めますわ」
「トゥエルはエテルのことよく分かってるんだね」
「ええ、付き合いも長いですし、背中を預けてきた仲ですからね」
そして「彼はあなたが思うよりずっと強い」と、トゥエルは答え仮眠に入っていく。明日で決着をつけなければ……。複雑な気持ちを抱きつつも私も仮眠をとることにした。程なくして私は眠りにつく。
そして──。
目を覚ました私はすこしずつ
「──っ⁉」
私の視力が戻りその顔の主が見えてきた。私はもう少しで飛び上がるところだった。エテルが
(続く)
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