第02話】-(雨の森に佇む黒髪の少女
〈主な登場人物〉
紬/イトア・女性〉この物語の主人公
エテル・男性〉主人公に想いを寄せるギルメン
その他ギルメン〉ユラ、フルーヴ、トゥエル
──────────
もう、二人に向かって堂々と「ゲス」扱いしているトゥエルに私は空笑いを浮かべた。あの
「お前ら、行く前に
こうして私は
──討伐当日。
その場所は通称「雨の森」と呼ばれている場所だった。というのも年中雨が降っているらしく私たちは雨具を準備して出発する。街から西部に位置し山を越した先にあるとのこと。途中まで馬車で進むことになった。
フルーヴの転送魔法で行けるのでは、と私は思ったのだけれどあの魔法は転送できる範囲があるとフルーヴに教えてもらった。
馬車の中、
そしてエテルはというと、ずっと馬車の窓から外の景色を眺めていた。こんなにも無言のエテルの姿を私は見たことがなかった。
エテル自身が持ってきた討伐依頼の時から私は何か違和感を覚えていた。この討伐には何かエテルにとって特別な意味が込められているのかもしれない、と。
私はフルーヴと魔法について話していた。
「イトア、これは不思議……なんだけど、イトアの魔力……どんどん強くなってる……気がする」
「えっつ⁉」
「強い力……暴走する人……沢山みてきたから……自我を忘れないで」
「……はい」
私の魔力が強くなっている……⁉私はフルーヴからのこの言葉に
あの時は嬉しさの方が勝って特に考えていなかったけれど、冷静に考えると討伐を重ねるごとに私の中で何かが変わってきている。
それに……、
そんなことを考えていると、外の景色が変わってきた。出発の時は晴れ渡っていた空が段々と曇り、ポツリポツリと雨が零れ始める。
街からもだいぶ離れ、早朝から出発した私達は夕方近くになった頃、馬車を止め必要最低限の荷物を持ちそこから徒歩で向かう。
もう雨の森が近くまで来ている。
─────
「ここが雨の森だよ」
先頭を歩いていたエテルが
本当にこんなところに
戦う前から体中汗だらけだ。
「これでは折角のお化粧が崩れてしまいますわ」
「あ~あちぃ」
トゥエルはフードを手で思いきり伸ばし顔に雨が当たらないように防いでいる。ユラは胸元の服の端を摘み空気を入れ替えながら愚痴を零す。フルーヴはいつものように無言で
私はいつものように初めて対峙する魔物の妄想を膨らませおののいていた。それにしてもこの森はおそらく長い間、人の出入りがなかったのではないかと思った。辺り一面雑草が私の腰辺りまで長く伸び行く手を
そんな道なき道をエテルはどんどん先に進んでいく。まるで道筋を知っているかのようだった。
私達が足元をおぼつかせ悪戦苦闘して進んでいる中、エテルがピタリと足を止めた。私は足元ばかり見ていたので前方にいたユラの背中に豪快にぶつかる。
「わわ、ごめんっ」
「……」
顔を上げると
後方にいた私はユラの背中から顔だけひょいと出し
雨に打たれながらその少女らしき人物は静かに
エテルがゆっくりとその少女の元に歩み寄る。私たちもエテルに続いた。その少女の顔がはっきりと見えてきた。色白の肌に漆黒の長髪。
見た目は私達と歳が変わらないと思わせる
「エテルネル・ロイ、お久しぶりね」
「フルミネだね。君はあの頃と変わらないね」
会話を交わす二人。
トゥエルが一瞬、
「……ロイ、ですって⁉」
私は素朴な疑問を問いかけた。
「あの……二人は知り合いなんですか?」
「うん。僕が子供の頃、お世話になった人だよ」
エテルの言葉が詰まる。そして──。
「君が
「「「「──⁉」」」」
私たちは目を見開いた。こんな儚げな少女が
「もしかしたらあなたが来るんじゃないかって思っていたわ。ねぇ、エテルは……私を殺しにきたの?」
そっと
「…………」
エテルはぐっと口を
「お前らが憎いっ‼ 人が憎いっ‼ あいつが私をこうさせたんだっつ‼」
眉を吊り上げ、見開いた灰色の瞳から怪しげな光を
「何があったんだっ⁉ フルミネッ‼」
今度はエテルが
「……だから殺した。ククク……骨の一本も残らず食ってやったっ‼」
「あはははははははははははははははははははははははははははっ‼」
彼女に「
(続く)
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