第05話】-(たからもの
〈主な登場人物〉
紬/イトア・女性〉この物語の主人公
カナタ、エテル〉主人公に想いを寄せるギルメン
その他ギルメン〉ユラ、トゥエル、フルーヴ、他
──────────
(ユラ視点 続き)
「……お前らいい加減にしろ」
静かに、そしてどすの効いた声が
しかし、いつもの女の声ではない。男の声だ。
その容姿は少女のはずなのに、そこには一人の少年が
「イトアは俺がつれていく。一秒でも早く時の間につれていってやりたい。お前らがここでわめいていては邪魔だ……どけ」
そう告げるとパチンとトゥエルが指を鳴らす。
──『無詠唱』 (詠唱を省略化)
無言の威圧。二人にその力の差をまざまざと見せつける。エテルとカナタを押し黙らせる。トゥエルの足元の真横に魔法陣が現れそこには。
──『
白く美しい大鳥が召喚された。神々しい程の純白の
トゥエルはユラに近づきイトアをそっと抱き上げる。それまで誰にも触れさせようとしなかったユラは素直に抱いていた手を緩め
トゥエルはイトアをその大鳥の前に寝かせると彼女の身体は少しずつ浮き上がり宙を漂った。エテルやカナタを背にトゥエルは
そして大鳥の
「……フルーヴ頼む」
近くにいたフルーヴにトゥエルが指示を出す。フルーヴは静かに
─────
その後、残っている討伐メンバー全員を集め宿舎に帰還した。
「城に報告してくる。後、イトアの様子もみてくるから……」
カルドは
──半日が過ぎた頃イトアが帰ってきた。
トゥエルは、
「ここでイトアの目が覚めるまで
優しい手つきでイトアをベッドに寝かせると
あの時、トゥエルの言動を周辺にいたメンバー全員が見ていたわけだが、後に「あれは悪魔か何かを自分に
イトアとユラを除いて誰もトゥエルが男だとまだ知らない。ベッドに寝かしたイトアを見るとまだまだその体の
トゥエルはイトアが寝ている
そして突然立ち上がり。
「イトアの報告もあるのでみなさんが集まっている談話室に行ってまいりますわ」
と、視線をイトアに向けたまま告げる。そしてユラも着いていくことにした。
談話室には着くと傷の手当をしている多くのギルドメンバー達の姿があった。トゥエルが
「イトアをつれて帰ってまいりましたわ。もう大丈夫ですが……まだ傷が癒えるには時間がかかります。ですからイトアのお世話は
そして続けざまに。
「特にエテル様とカナタ、貴方達二人には絶対に部屋に入れさせませんことよ」
トゥエルはにこりと愛らしい笑顔を向けあの時と同じように無言の圧をかける。
「
最後の一言は、本当にか細い声だったが、隣にいたユラにははっきりと聞こえた。ユラは横目でトゥエルに向かって一瞬顔をひきつらせた。
そしてまたお人形のような
─────
そしてトゥエルは、自分の簡単な身支度を整えるとイトア達の部屋に持ち込み、イトア、ユラ、トゥエルというおかしな同室生活が始まった。
「ベッド、貸してやろうか?」
「いえ、
トゥエルはユラからの申し出を断る。荷物を見ると
トゥエルは
いつも綺麗でいられるようにと毎日髪をとかし
──それは本当に宝物を大事にするかのように
そして毎夜トゥエルは同じ言葉を繰り返した。イトアの両手を握り。
「イトア、もう黒竜はいないわ。大丈夫。だから帰ってきてもいいのよ……」
自分の身なりなど気にする素振りもなく。ただ瞳の先にあるイトアだけを見ていた。ユラは自分の分とトゥエルの分の食事を毎日部屋まで持っていき一緒に食べた。
くるなとあれ程、念を押されたのにも関わらず、毎日エテルとカナタが交互に部屋にくる度。「ユラ、おっぱらってくださいませ」と、トゥエルはユラを用心棒扱いした。
……お前も男なんだけどな、とユラは心の中で思いながら。
そして五日後、イトアは目を覚ました。
(続く)
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