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その様子を目の当たりにするうちに、先生に会うのがこれきりになってしまうという実感と共に哀しみがわいてきました。

 いえ、それだけではありません。

 なんで先生はあんなに言われなければならないんだろう。

 マコトくんの心の中に、かすかな火が点りました。

 それは、マコトくんにとって初めての気持ちのほとばしりでした。


「先生」

 マコトくんは、最初はおずおずと、でもしまいにはきっぱりと、右手を高く上げました。

「先生!」

 もう一度大声で呼びかけると、ようやくキムラ先生がマコトくんに気づきました。周りに群がっていた大人たちも、次々とこちらへ振り返りました。

「これからも先生の授業を受けたいです」

 マコトくんは、自分の素直な気持ちを言葉にしました。

「先生が教えてくれることはすごく楽しいし、教える先生もすごく楽しいんじゃないか、と思うからです」

 大人たちは、目を丸くしたまま、何の反応も見せません。

「先生だけじゃないです。ほかのみんなから教わることも、ぜんぶすごく楽しいことばかりだし、みんなもうれしそうに教えてくれます」


 やっと、キムラ先生の口が、かすかに動きました。

「……なんでも、『すごく』というのはやめましょう」

 それから先生は、涙の粒をまなじりからこぼしながら、もう一度、にっこりと笑いました。

「……別の言葉で言いかえてみてください」

 マコトくんが書いてきた宿題の作文に、キムラ先生は、口を酸っぱくしてそう言い続けてきました。

毎回そう言いながらこれまで作文を返してきた先生に、いつも思っていたことを、マコトくんは初めて口にしました。


「じゃあ先生、もっと言葉を、話し方を教えて」

 勢いよく立ち上がったせいで、椅子がばたんと倒れてしまいました。それでも、かまわずマコトくんは続けました。

「今日一日じゃきっと足りないから、明日も、その先も」

 マコトくんは、先生を見つめて答えを待ちました。

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