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道の端々にふらふら立ち寄りながらも、どうにかこうにか先へと歩いていくうち、前方に二本の丸太でできた校門が見えてきました。
校名を彫った看板が打ちつけられています。
門をくぐるとせまい校庭があり、その向こうの小高い丘の上に、灰色の木造平屋の校舎が立っています。
校舎の裏には、入り江の外の青い海が広がっています。
マコトくんは、正面口からではなく、海側にあるマーガレット花壇の脇の小道を通って、通用口から校舎に入ります。
潮風を身体に浴びて、広々とした海の景色を見ながら歩くのが、とても心地よく感じるからです。
靴を脱いでつまみ上げ、廊下を横断して、下駄箱で上履きに替えました。
古びた床板は、踏みしめるたびにぎゅっぎゅっと音がして静かな廊下に響きます。
教室の扉にぴったり貼りつき、そっと扉を開けておそるおそるのぞきこみました。
「マコトくん、入ってきてください」
キムラサユリ先生が銀ぶちメガネの奥からこちらを見ています。あまり怒っているようには見えません。
「おはようございます。どこに立ち寄ってきたのですか」
学校に来ると、キムラ先生は必ずこの質問をします。マコトくんは先生から目を離せないまま、おずおずと部屋の中に入って木の椅子に座りました。
「今日はね、先生……」
マコトくんは、今朝出会った人との会話、動物、鳥、魚、そして景色、おぼえている限りのこと、いつものように満ち足りた時間をすごしてきたことを話しました。
あまり上手には伝えられませんでしたが、先生は、マコトくんを見つめながら、ずっと話を聞いていました。
「今朝も楽しく学校に来ることができたようですね。よかった」
ほっとしながら、マコトくんはあらためて教室を見渡しました。
そこで初めて、いつもと違う奇妙な光景に気がつきました。
後ろの方の壁に、何人もの大人が立っています。
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