第292話

 リョウが勉強に集中しているとき。

 背後から、ふれ〜ふれ〜、という応援歌が聞こえてきた。


 勘弁してくれよ。

 かわいすぎて、学習を邪魔する効果しかない。


「なあ、アキラ。ノリノリのところ悪いが、作業妨害用BGMになっている」

「じゃあ、1人で遊びます」


 アキラが布団に潜っていった。

 モグラみたいにモゾモゾしている。


「ああ、ご主人様〜」

「ッ……⁉︎」

「そこはお許しください。アキにゃんの弱点なのです」


 声が色っぽすぎて、勉強はふたたびストップ。


「それ、なんてプレイ?」

「猫になって飼い主様とイチャイチャするシチュエーションだにゃ。僕はお腹をナデナデさせるのが好きだにゃ」

「おい……エロすぎるだろう」

「プレイ続行だにゃ」


 アキラの息づかいが荒くなってきた。

 うにゃ〜♪ 感じるにゃ〜♪ と言い出したあたりで、リョウは我慢の限界を迎える。


「おい、アキラ。俺を誘惑しているのか?」

「ふっふっふ。リョウくんも僕と一緒に妄想ごっこをしたくなったか?」

「やりたい。というか、アキラを愛猫みたいにナデナデしたい」

「ほれ、服の上からなら、お腹こちょこちょしてもいいぞ」


 ではでは、失礼します。

 そういって繊維せんいの上から指で触った。


 くるくるとうずを描くように動かしてみる。

 アキラが笑いを必死に我慢している。


「ギブギブ! それ以上は無理! 僕の腹筋が壊れちゃう!」

「やめない。あと10秒くらい我慢してくれ」

「や〜だ〜。リョウくんの意地悪〜」


 口ではやめてといいつつも、アキラは嬉しそう。


「僕がやめてってお願いしたのに、リョウくんはヒドいやつだな」

「その割には楽しそうだったぞ」

「あれは生理現象だ」


 まったく。

 そういって乱れた服を直している。


「アキラの髪、くんくんさせて」

「えぇ……嫌だよ」

「嫌なのは知っている。ゆえに許可してほしい」

「君はおもしろいことを考えるね。仕方ないな〜」


 アキラを抱き枕みたいにホールドした。

 女の子だから、肉つきが柔らかくて、どこを触っても気持ちいい。


「アキラの髪、なんか落ち着く」

「変態さんだな〜」

「知ってる。でも、アキラも変態だろう」

「そうかな? 僕のどのあたりが変態なのさ」

「男子の格好をして学校に通っているだろう。その時点で変態だな」

「うっ……」

「女子をたらし込んで楽しんでいる。ますます変態だ」

「やだ……そういわれると恥ずかしいよぉ〜」

「あとエッチな格好がよく似合う」

「あぅあぅ……許して」


 アキラが涙目で懇願こんがんしてくる。


 でも、知っている。

 本性はちょっぴりM寄りなのだ。


「言葉で責められるの、好きなんだろう。以前に学校で話していたよな」

「君はなんてことを……」

「今日くらい嘘をつくなよ」

「うっ……嬉しいです。僕は変態です」

「ヤバいな、アキラ。その顔で変態発言はマズい」

「だって、仕方ないだろう。リョウくんだけが僕の本性を知っているんだ」

「かわいい」

「あうっ……嫌いになった?」

「なるわけない。ますます好きになった」

「もしかして、リョウくん、興奮しているの?」

「メッチャしている。アキラを襲いたいけれども、我慢するのが辛い」

「ふっふっふ……男子のさがだねぇ」

「アキラは辛くないの?」

「それは秘密」


 アキラは無邪気に笑っていて、やっぱり男女の差異はあるんだな、と痛感した。


「アキラと同棲してぇ……」

「やばいな。僕の変なところ、全部知られちゃうな」

「ダメなの?」

「リョウくんならいいよ」


 首筋に軽くキスされた。

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