第49話 リッチー伯爵 視点

オキシ騎士爵から報告があった

「伯爵様、ある商会から古竜の牙と鱗が売り出されるとのことです」

「なに?角はないのか?」

「商会に取り合わせたところ売りに来た冒険者に確認はしていないとの事でした」

「ぬぬ、オキシよ、商会に問い合わせ冒険者の居場所を確認して、ワシの屋敷に来るように伝えろ」

「はは、お任せあれ」


翌日、冒険者の二人が屋敷に来た

少々もめたが最終的に角を手に入れた

『泣き落としにより金額は安く手に入れることが出来たのは重畳、個人資産的には出せる限界ではあったが、まあ、少々失礼な奴らだったがあれだけ買い叩いたら不満もあるだろう』と思い見逃す事にした

「だれか、薬師を呼べ」

すぐに薬師が招聘された


「これが古竜の角ですか!」

薬師は目を輝かせていた

「さあ、早く薬を作ってくれ」

「リッチー伯爵様、まだ材料が足りません」

「なんだ、まだあるのか?」

「竜の角を竜の血に付け一晩ねかせ粉にするのですが血の入手は出来ますか?」

「先に言わんか!」

「申し訳ありません、まさか古竜の角が何の情報もなく手に入ると思いませんでした、しかし、この角の魔力を見る限り最近入手したものと思われます、持ち込んだ冒険者にあたれば血の入手も可能かと」

「う、うむ、実は冒険者とはもめてな、金貨千枚で入手出来たが二度と取引しないと言われておる」

「金貨千枚ですか?伯爵様なんと酷いことを!これは金貨十万枚積んでも入手できたら幸運ぐらいの品でございます、それを千枚と買い叩けば冒険者も二度とこの街に来ないと思います」

「なんとかならぬか?」

「こればかりは・・・それよりこの話が広まれば、希少な素材は街に来ないかと」

「なぜだ?」

「適正価格で買い取っていないのが問題です、十万から千、あまりに差がありすぎます、普通の人は持ってこなくなるでしょう」

「なら、どうすればよい?」

「他の街で探すか?、どこか第三者を間にたてて持ってきた冒険者に依頼するべきかと」

「うむ~、取りあえず冒険者を探すか、あの少女なら泣き落としで安く入手できるであろう」

「では、わたしはこれで、また、材料が手に入ったら御連絡ください」

「うむ、さがってよいぞ」


伯爵は薬師とわかれた後、兵士を使ってユウヤとチカの捜索を開始した

「伯爵様、冒険者の二人はあの後すぐ街を出たみたいです」

「くそっ!逃げられたか」

伯爵は角を手に入れてからすぐ娘が治ると思っていた分イライラしていた

「どこに向かったか、わかる奴はおらんのか?」

「取引をした商会の者を連れて来ております」

「おお、よくやった、すぐ会おうではないか」

兵士に連れられ店長のミックが来ていた

「伯爵様にはご機嫌うるわしゅございます、本日はどのようなご用件ですか?」

「先日、お主の店で竜の牙と鱗を売った冒険者はどこの者か知らぬか?」

「あの方達はあの日初めて来たお客様でして、あれからは参られておりません」

「あの者が来たら、お主の店で古竜の血を買い取ってもらえぬか?」

「古竜の血でございますか?鮮度の関係もありますから一概に買い取れと言われましても」

「薬に使える鮮度ならよい、量も薬師に確認しておいてくれ、手に入れたらワシがお主から金貨百枚で買い取ってやろう」

「御冗談を、竜の血ならそれでいいかも知れませぬが、古竜の血ともなると値段は金貨五百は頂かなければ」

「お主はワシに吹っ掛けるのか?」

「いえ、そのようなことは、しかし、買取の最低費用は頂かなければ当店が赤字になってしまいます、しかも今の値段でも買取できるかわからないぐらいの底値でございます」

「そうなのか?しかし、角は金貨千枚で譲り渡す奴等だ、物の価値などわかるまいて」

「角を金貨千枚でございますか?そのような値段で買い取ったとなると二度とあの者はこの街に来ないでしょう」

「お主もそういうのか?少しはワシの為に尽くしてくれてもよいではないか」

「私達街の住人は伯爵様の善政を知っておりますからなんとかしたいと思いますが、他所から来た冒険者には関係ない話でございます」

「ならばお主がワシの為に何とか手に入れてもらえぬか?」

「金額があえば交渉さしてもらいますが、その値段だと交渉も出来ません、しかも、一度買い叩いた後ならば難しいかと、その状況で売ってもらう為に金貨を積まねばならぬかと」

「予算はないのだ、後日払うから何とかしてくれ」

「努力はいたしますが期待なされぬように」

ミックは難題を押し付けられ頭を抱えながら帰宅した

そして、希少品を無理やり法外な値段で徴発した噂は広がり、希少を、街に持ち込む人は少なくなっていった

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