32回目 双子のどっちだ?

「聖女カレンを害したことは、明白だ。よって、公爵令嬢エレンとの婚約破棄と聖女カレンとの婚約を発表する。双子の姉ながら妹いじめで身を滅ぼしたな」


そう言った王子の隣には1人の女性が寄り添っていたが、対する公爵令嬢は、真正面に位置している。


ただし、双子だけあって、2人は完全に同じ姿形同じ雰囲気をつくっていた。


「殿下、1つ聞きたいのですが」


「聖女カレン。何でも聞いてくれ」


「私だけが、聖女じゃないわよ」


「は?」


そう言うと目の前の公爵令嬢の方へ歩き出す。


姉と呼ばれる者に並ぶと、全く同じで見分けがつかない。


「姉は聖女ではないはずだ。そもそも、一緒の時間を過ごしたのは妹の方で姉ではない」


「いいえ、私たちは聖女。2人とも聖女。絶対記憶と意思共有の特殊能力を持つ女神。時々入れ替わっていたの、知らないでしょ」


「なんだと」


「家族でさえも間違えるのに、家族よりも少ない時間しか接しないあなたが見分けられるかしら」


「今、ここで正解しないと国の恥…よね。いえいえ、女神の顔に泥を塗る…かしら」


王子は、こっちと思った方を選んだが、2人から不正解とされてしまい、式典を中断させてまでした行為により、平民に落とされた。


「「まぁ、入れ替わっていたのだから、どっち…というと答えは2人ともになるのだけどね」」


(今回は双子で1人格か、面白いわね。こんな経験なかったわ)


「くっそー」


はしたない言葉を発した元王子は衛兵に連行され、いくばかの金銭等とともに城から追い出されたという。


「「弟さんが国王になって、正解」」


即位式の真っ最中の出来事でした。

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