うそつきの、うた
澄乎
わたしの嘘について
私は、嘘をついている。
まず、私の笑顔について。
本当は、心の内では、笑ってなどいない。
いや、時には嗤うこともあるが、
たいてい、笑顔の時というのは、
貴方の話に飽きている時や、
違うことに興味が湧いている時や、
本当は嫌いなものを、
好きな振りをしている時だ。
次に、私の自由について。
自由というのは、束縛が無いということだ。
けれども、私の自由とは、
束縛されていることであった。
ある時は家族、
ある時は彼、
ある時は彼女、
ある時は貴方に、
拘束され、息をするのも難しく、
少ない選択肢を与えられている時が、
私にとっての自由であるのだ。
何故なのか、それは私にも解らない。
けれども、私にとっての自由とは、
自由を奪われていることなのだ。
それから、私の言葉について。
これまで沢山の言葉で、沢山の人を、
騙してきてしまった。
これはひとつの懺悔である。
時に幼い子供を騙し、
時に自分より一回りも年上の大人を騙して、
今は貴方を騙している。
私の言葉は、嘘だらけなのである。
最後に、私のいのちについて。
いのちとは、どのように定義されるだろうか。
心の臓が動いている。
明確な意志を持って息をしている。
生きている、とは、息をしていれば、良いのか。
私にとって、いのちとは、そうではないのだ。
私は、私のいのちは、私のいのちではないのだ。
これは、誰のものだったかわからないが、
何もかも、誰かに譲り受けたものである。
私は、私といういのちは、その昔、
とてもとてもふるい昔、息絶えてしまった。
この手で縊ってしまった。
だから、このいのちは、嘘である。
私の最大の嘘は、それは、
私自身である。
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