第2話 そうだ!“斎藤”居ないのか?

 そうだ、“斎藤”居ないのか?だが、伏せた状態より頭をあげる勇気が出ない。


 日が暮れるまで待つしかなさそうだ。。。


 〈ふー、プクプク〉顔半分湖面に浸した状態で溜め息一つ。


 〈タポーン、タポーン〉近くに岩か何かあるのだろう打ち付ける湖面の波音が耳に障る。


 突然〈ふー〉、「やれるもんなら、やりやがれ!」と男はいきなり仰向けにでーんと引っ繰り返る。


 仰向けになった顔の視界には、空をバックに岩場の突端にぴょこんと座る少女の眼差しがあった。


 その姿は肩口がぽわんと膨らむ西洋貴婦人のドレスにストライプ柄のチューリップスカートに白いハーフタイツ。


 腰にはちょっとアンマッチな紅い大きな袋をぶら下げ、襷掛けに革の鞄。


 シルクの長い手袋に肩口に乗せた小さな日傘を〈クルクル〉と回している。


 そうまるでメリーポピンズ!


「悪魔め今度はメリーポピンズの姿か、ほんと飽きさせない奴らだぜ」


 〈くっくっく〉と引き笑いの声。


「シキシマさん、さっきからずっと一人で何遊んでるの?」


「なー何故俺の名前を知っている」仰向けから飛び起き、片足曲げて身構える。


 身のこなしは流石、特殊部隊の隊長だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る