第5話 三日市 Ⅱ

商業区にあるパンケーキの有名店『ラルフ』。


ウースでも人気上位に入る洋菓子店。その看板メニューは『季節のパンケーキ』。


季節のフルーツをたっぷり使い、甘さ控えめの生クリーム、ふわふわのパンケーキが織りなす王道故に一切の妥協が許されない作品。


『ラルフ』は独自のレシピで作られるパンケーキが女性の心を掴み連日行列が絶えない有名店まで上り詰めた。


そして、三日市では限定メニューも提供されるので更なる行列が二人を襲う。




「うわー・・・・・。これは、凄い行列だね。」


「でも、人の出入は早いよ。多分、ゆっくりとは座れないんだと思うよ。」


「エリス・・・別の店にい」


「行かないよ!!!」


「あ、はい。じゃー並ぼうか。どれくらい時間かかるかな?」


「うーーーーん。判らないけど、そんなに並ばないと思うよ。食べたら直ぐ出ないと行けないみたいだし。」


「混雑対策なのかな。普段から人気店だから仕方ないか。」


「本当はゆっくり食べたいけど・・・この行列じゃ仕方ないね。」




二人が並んでからも後ろには絶えず人が並ぶ。しかし、お店には長居は出来ないので比較的待ち時間は短くなっていく。


二人が並んでから一時間。ようやく入店して席に着席できた。




「私は限定のパンケーキください。」


「僕はチーズケーキをお願いします。」


「畏まりました。本日は大変混雑しておりますので申し訳ありませんが、お食事が終わり次第の退店になっておりますのでご了承お願いします。」


「「わかりました。」」


「少しぐらいは、ゆっくりして良いからね。」




僕らの注文を確認した後、案内してくれたお姉さんは小声で伝えてくれた。


多分、子供二人の来店だから少しは気に掛けてくれているんだと思う。




「楽しみだね。クライスはパンケーキじゃ無くて良かったの?」


「僕はパンケーキよりチーズケーキが好きだからね。エリスが喜んでくれたら良いよ。」


「そ、そう。途中で欲しいって言ってもあげないよ?」


「ははは、エリスは優しいから分けてくれると思ったんだけど?ちょっとだけ交換しようよ。」


「クライスがどうしてもって言うなら交換してあげる。」


「ありがとう。じゃ、一口づづ交換しようか。」




二人が、周りから見たら甘い空気を醸し出していると注文したケーキが届いた。




「お待たせしました。当店特製のパンケーキをお楽しみください。」


「きゃーーー。美味しそう。食べるのが勿体ないくらいだよ。」


「確かに・・・。僕もそっちにすれば良かったかな?」


「だから言ったじゃない。仕方ないから一口は交換してあげる。」


「ありがとう。僕のも一口あげるね。」


「デート楽しんでね。二人ともお似合いよ。」


「え!!!!・・・ありがとう。」


「エリス?何言われたの?」


「うーーーー、クライスには関係ないよ。ほら早く食べようよ。」




エリスは店員さんに何かを言われたのか、顔を赤くしてお礼を告げた後早く食べようと急かしてきた。


エリスが注文した『限定のパンケーキ』は三段に重ねられたふわふわのパンケーキに色とりどりの果物やソースが掛けられていて見た目だけでも豪華な仕上がりになっている。




「うーーーーーん。やわらかくてモチモチしてる。それに沢山のソースが混ざり合って美味しいよ。」


「それは良かった。並んだ甲斐があったね。」


「本当だよ。三日市限定じゃ無くて、何時でも食べられたら良いのに。」


「仕方ないんじゃないか。三日市の時しか食べられない果物を使ってるんだから。」


「そうだよね・・・。いくらでも食べれちゃう。」


「おかわりは出来ないのが残念だけど、また来ようよ?」


「それは、二人で?」


「あ、当たり前だろ。一人では『ラルフ』に入る勇気なんて無いよ。それにエリス以外は誘う気ないし。」


「あ、ありがとう。じゃ、楽しみにしてるね。」




何時も一緒に居る幼馴染の癖に、お互いの事を意識すると途端に初々しい反応を示す二人。


周りからは暖かい目で見られているが二人は気付いていない。


幸せそうに食べるエリスとの時間を楽しみながら二人の休憩時間は過ぎていくのであった。

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